ジョナサン・セリャクさん(31)は今年ニューヨーク市アッパーイーストサイドのマンションに引っ越した時、通りの向かいにある高級ジムのエクイノックスに入会する予定だった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で米国中のスポーツクラブが閉鎖されたため、高校時代から持っていたウエートトレーニングの器具を部屋に設置した。

 部屋でのウエートリフティングと外でのランニングが新たな日課となったセリャクさんは、ジムの入会だけでなく、過去に友人と訪れていたヨガやバイクエクササイズのスタジオについても考え直している。

 セリャクさんは「月会費がかかる本格的なジムにはもう入会しないつもりだ」と話す。新たに始めたワークアウトの低コストで便利な点が気に入っている。「誰かと調整してテキストを打ち、このクラスに通おうと伝えたりする必要がない。めちゃくちゃ簡単だ」

 コロナのパンデミック(世界的大流行)で、ジムを離れて家で運動をする動きが加速した。かつてジェーン・フォンダのVHSテープが促した流れをはるかに上回っている。セリャクさんのような人たちはネット接続機器やアプリといった新たな技術を使い、対面式のクラスで得られる注目、エネルギー、コミュニティー(挨拶や競争を含む)を、家から離れることなく享受している。

 そのためジムやフィットネススタジオはより多くのデジタルクラスを試し、顧客が安全に感じられる方法を模索している。多くの人が「巣ごもり」している間も収入を得るためだけでなく、パンデミックの収束後に戻ってきてもらうためだ。

 会員制の「クラスパス」はもともと、さまざまなフィットネスセンターへのアクセスを提供するためのサービスだったが、3月にはバーエクササイズやピラティス、エアロビクスなどのクラスの生配信を開始し、今では1週間に5万件を超えるオンデマンド型ワークアウトを提供している。レッスン料は無料から最大20ドル(約2100円)まで。コロナウイルスの感染拡大前には、クラスパス会員の大半は職場や自宅に近いスタジオでのワークアウトに参加していた。現在はデジタル会員の半数以上が、別の都市のスタジオで行われているクラスにオンラインで参加している。

 だが、対面式のクラスとデジタルサービスを並行して運営するのは難しいかもしれないと一部のアナリストは指摘する。例えば、クラスパスのスタジオは一般に、対面式のクラスに比べてオンラインクラスの料金が大幅に安い。また、一部の有名スポーツクラブやインフルエンサーが、インスタグラムなどのソーシャルメディアプラットフォームでメンバーに無料でデジタルコンテンツを提供している。

 高級ジムやバイクエクササイズスタジオ「ソウルサイクル」を保有するエクイノックス・グループは、インスタグラムに無料のワークアウトを掲載している。米国の99カ所のジムのいずれかに会費――クラブによって異なりニューヨーク市では月額約190ドル(プラス入会金)から――を支払った人を対象に、数百のオンラインクラスへの無料アクセスを提供するモバイルアプリを3月に立ち上げた。会員は持っている器具や時間を基にコンテンツを検索できる。

 このアプリを手掛けるエクイノックス・メディアのジェーソン・ラローズCEOは、外出規制・自粛が収束した時には社会的接触に飢えた顧客が対面式のクラスやジムに戻って来ると期待。「終わった時のインストラクターとのハイタッチが好きだ」と話している。

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