「偶然の一致なのか?」ビットコイン創設者サトシ・ナカモトに重なる「世界的有名人」写真はイメージです Photo:PIXTA

いまや世界を席巻する暗号資産となったビットコイン。それを生み出したサトシ・ナカモトは、名乗り出れば莫大な富と名誉を得られるにもかかわらず、いまなお姿を現さない。正体を追う過程で浮上したのが、イーロン・マスク=サトシ説。口癖、性格、技術などの奇妙な一致が浮上するが…。※本稿は、ジャーナリストのベンジャミン・ウォレス著、小林啓倫訳『サトシ・ナカモトはだれだ? 世界を変えたビットコイン発明者の正体に迫る』(河出書房新社)の一部を抜粋・編集したものです。

「サトシ・ナカモトの正体」
著者の元に届いた怪しげなメール

 2021年の大晦日、私の受信ボックスに1通のメールが届いた。

「件名:サトシに関する新情報」

 ワイアード誌の記事(編集部注/サトシ・ナカモトと疑われる人物、複数人に行った取材をまとめた記事「ビットコインの盛衰」)を書いて以来、私は定期的にこのようなメールを受け取っていた。

 ビットコイン、そしてそれを生み出した暗号通貨業界はまだ歴史が浅く、2017年にそれを購入していた人は「OG〔Original Gangster(ベテラン、元祖)の略〕」と呼ばれるほどだった。

 初期の頃からこの業界の記事を書いていたジャーナリストは古参と見なされ、サトシ・ナカモトの正体に関する説を売り込もうとする人々にとって恰好のターゲットとなっていた。常に誰かしらが、新しいサトシ説を持ち込んでくるのだ。

 私は通常、このようなメールにはあまり注意を払わなかった。ナカモトに関するニュースは、一瞬は新しい発見を期待させるのだが、最終的には説得力に欠けることが多かったのである。

 この謎が解明されることはないだろうと、私は半ば諦めていた。今回のメールにも署名がなく、まったく信頼できなかった。