最悪の状況で頑張り過ぎるとドーンと落ちるの

――自分がうつになって、精神科医として想像していたのと違ったと思ったのは、特にどういうところだったのでしょうか。

精神科医Tomy 理屈じゃ説明できないんですけど、自分の意識があること自体、気持ち悪くなった感じがしたんですね。落ち込むとか悲しいとかじゃなくって、生きていることがすごく居心地悪くなったんです。精神科医としての知識がなければ、「この状態から早く逃げ出したい!」って衝動的な行動を起こしそうで、うつになった人はこれで死にたくなるんだなって思いました。

 それまでは、うつになるとやる気がなくなって、生きる意欲もなくなって、全部いやになって衝動的に死にたくなるんだろうと思っていたんですけど、そうじゃなかった。ただひたすら気持ち悪いんですよ、生きていること自体が。これは経験してみないとわからない感覚ですね。

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――その状況がどのくらいの期間、続いたのでしょうか。

精神科医Tomy 3ヵ月くらいだったと思います。後から振り返って一番後悔しているのは、彼が亡くなった後もやることがいっぱいあったから、気を紛らわせるためにガンガン仕事してたんですよ。それがよくなかった。目の前のやるべきことを一気に片づけたあと、ドーンと落ちてしまったんです。

 まず診察していても、言葉が出てこないし、ろれつが回らなくなりました。食事をしても味がわからない。眠れないから夜がくるのも怖い。突然、鼻が気になってコンクリートにこすりつけて、血が出て痛い思いをしたこともありました。でも、時間が経てば少しずつ良くなるはずと思って、荒れ狂う波の中で浮き輪にしがみついていたような感じでした。

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 周りも様子がおかしいことに気がついて、「休んでください」って心配してくれたけど、ちょっと休んだくらいじゃ何も変わらないんですよね。ただ専門家としての知識はあるから、ここで仕事を休まないと本当にヤバイと思って。頼まれたことには全部「カット、カット」、「ノー」と言い続けました。それから一年くらい経った頃ですかね。ようやく回復したかなと思えたのは。元気になるまで1年くらいはかかったと思います。