2カ月半遅れの全人代の開幕
中国共産党の抱く3つの思惑
今週金曜日(22日)、全国人民代表大会(全人代)が北京で開幕する。新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」)の影響を受け、開幕は約2カ月半延期された。世界が依然としてコロナと戦い、決して予断を許さない状況にある中での開催にあたり、習近平総書記率いる中国共産党指導部は、3つの思惑を抱いていると筆者は捉えている。
1つは、直近で東北部の吉林省などで再びクラスター(集団)が発生し、局地的封鎖(ロックダウン)の措置が取られてはいるものの、全体的にはコロナ抑制に成功し、第2波の防止にも自信をのぞかせているという点である。
2つに、工作の重心をコロナ防止から経済再開へと本格的に転換するという点である。コロナまん延や経済停滞は、いずれも共産党の正統性にとっては脅威となり得るが、前者にある程度のめどがついたとされる今、後者を断固として推し進めようとする統治手法は、社会主義市場経済の下で政治と経済を運営する中国の体制に起因している。
3つに、全人代という1年で最も重要な政治イベントが開催されるという事実は、中国人民にとって、心理的に安定剤、あるいは起爆剤となるという点である。政治の安定があっての経済活動であり、生活基盤はその上で初めて保証されると心から信じる人民は多いし、昨今ではそうした人民がますます増えていると感じる。