過当競争で苦境に陥るデリヘル業者

 登録制のもとで誰でも開業できるようになったデリヘル業者は、過当競争にさらされているために客単価が低下している。また、自社のウェブサイトの運営・維持のみならず、インターネット上で自社サイトの検索順位を上げる「SEO対策」や、風俗情報サイトへの広告掲載などにも経費がかかるようになり、利幅は急激に薄くなっている。

 そのため、「デリヘル市場」の中で10年かけて洗練されてきた合理的かつ合法的なインフラを用いて、「18歳未満の素人」という非合法であるがゆえに付加価値の高い新規事業へと進出した。

「客にばれない範囲で『若い』ってことにして、実際はデリで使っている18歳以上の女のコの中で本番大丈夫な子を、援助交際ってことにして入れたりすることもある。女のコからしてもデリよりも利益率高いし、取り分も増やせますからね。でも、何もないところからは始めたばかりの援デリ屋は『ミテコ』使ってるだろうね。稼げない若い不良がこぞってやってますもん」

「『ミテコ』は基本的には頭がよくはないから、一回捕まえればこっちが好きなようにコントロールできるし、デリヘルと違って『ほかの店で働く』なんていう選択肢もないわけだから逃げない。『待ってれば毎日客つけてあげるから儲けられるよ』『過激なことをすればもっとカネあげるよ』なんて言って」

 今年に入ってから、「援デリ狩り」と呼ばれる犯罪の摘発が相次いだ。これは、「援デリ」業者に何らかの理由をつけて狩る(脅す)というわけではない。暴力団の構成員等が、援助交際をしようとインターネットに書き込んだ個人の女性を「勝手に商売しようとした罰金を払え」と脅して軟禁状態にし、強引に売春、すなわち「援デリ」要員にすることを指す。

 先日、久しぶりに赤坂のもとを訪ねてみると、彼はこう語っていた。

「もうだいぶ前に(援デリからは)手を引きました。結局、デリヘルなりほかの商売なりを始めるカネすらない変なヤツらがたくさん参入してきて、そいつらが強引にカネにしようとした。結果的に、たいして儲からなくもなったし、摘発されるリスクも上がっている」

 赤坂は今、「子どもがもう少しで小学校に上がる歳になったんで」と、子育てのために農場がある妻の実家近くに家を買い、そこで暮らす。ただし、“ポケモン”の住居のひとつもその近くにあり、繁華街まで片道一時間ほどの送迎を続けている。「ちょっと足りないんで」と店から頼まれれば、“ポケモン狩り”を怠らない。