では、「次の好況期に完全雇用が達成された時に、ゾンビ企業が効率的な企業の邪魔になるから、今のうちに淘汰しておけ」という主張は妥当だろうか。筆者の考えは、否である。

 経済が効率的であるならば、次の好況時には労働力が不足して賃金が上昇し、非効率な企業は高い賃金が払えずに自然と淘汰されるであろうし、そうでなくとも労働者が非効率な低賃金企業を辞めて効率的な高賃金企業へ転職するであろうから、今の時点で急いでゾンビ企業を清算する必要はないだろう。

「ひとたび政府がゾンビ企業を支援すると、次の好況期にも支援が続いてしまいかねない」と懸念する人もいるだろう。その点については、筆者も全く同感である。

 政府の支援に関して重要なことは、ゾンビ企業の支援は不況期に限るということである。「失業率が一定水準を下回ったら支援を打ち切る」という条件は、支援を終わらせる、あるいは開始する基準の1つとなるだろう。

 余談であるが、ゾンビ企業については、小泉構造改革の主要論点であった。そのときの筆者の印象は、「病気なら外科手術をすれば良い」と主張する人々と、「患者の体力が落ちている時には体力回復を優先させないと、手術をしたら患者が死んでしまう」と主張する人々で、議論がかみ合っていなかったというものであった。

「神の見えざる手に任せておけば景気は回復するのだから、景気など気にせず経済の効率化を進めよう」と考える人と、「景気悪化を放置すると悪循環に陥るから、景気対策が重要だ」と考える人では、議論がかみ合わないということでもあった。

 筆者が後者(景気対策重視論者)であることは、言うまでもない。

 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織等々とは関係がない。