「しまった飲みすぎた!」「やってしまった」「でも、おいしかったから仕方ない」などと思いながら自室デスクに戻ったBさんを腹痛が襲い始めたのはその1時間後だった。

「久しぶりに腹を下すというのを経験した。いったん落ち着いたと思ってもまた痛みの波がやってくる。腹の中のものが全部なくなったかに思えても腹はまだ下る。苦しかった」(Bさん)

 ただ「苦しかった」で済めばまだいいのだが、問題はこれがテレワークとはいえ一応業務中という点である。会社に出勤している時にトイレにこもれば周囲は「なんかBさんお腹の調子が悪いみたい」と大目に見てくれそうであるが、「テレワーク中にトイレにこもっている」はどことなくサボっているような趣きがある。

 しかも、腹を下した原因は確実に「自分が調子に乗ったから」であり、そこに罪の意識があった。結果Bさんは職場の誰にも自分の腹痛を告げることなく業務に勤しむことを選択した。

 しかし、大いなる決断をしたからといって腹痛が消えるわけではない。当初は痛みを我慢し脂汗を垂らしながら会社とコンタクトを取っていたが、もはや限界がきてとうとうトイレに駆け込んだ。ノートパソコン持参で、である。責任感か罪悪感か、はたまたその両方によるものか、追い詰まったBさんはトイレで用を足しながら仕事をするという暴挙に及んだのであった。

「ちょうどテレビ電話をする時間で、部下の1人が気づいて『Bさん、いつもと部屋違いますね』と言ってきたが、『うん、ちょっと』と適当に濁しておいた。

 さすがに電話中は用を足すつもりはなかったが、トイレに座るだけで安心感があったのでよかった。それに、幸いその電話中に腹痛の波がくることもなかったのでオッケー」(Bさん)

 本当にオッケーなのかは疑問だが、大過なかったようで何よりである。腹痛に耐えながらトイレで仕事をするというBさんの置かれた状況は地獄であるし、そのBさんの実情を知らずに(ひょっとしたらなんとなく察しているかもしれないが)テレビ電話をしている同僚らも真実は地獄である。

 自宅は過ごすのが楽な半面、やはり油断しやすく、こうした地獄を招き得る危険をはらんでいる。

霊かUMAか
実在が確認できない上司の娘

 ハプニングといってもネガティブなものばかりではない。以下に紹介するのは「ちょっとよかったハプニング」である。

 テレワーク中のテレビ電話に「家族が映り込んでしまった」という話はよくあって、うっかり映り込ませてしまった側には「ミスした!」という自覚があるかもしれないが、それがかえっていい結果をもたらすことがある。目撃する側にとっては取り立てて目くじらを立てるような類の失態ではなく、また目撃するものの種類によって目撃者の心を打つ場合があるからである。

 Cさん(33歳女性)の上司は愛想がなく、身なりも気づかわないので野暮ったく、全体的にもっさりした雰囲気の男性だった。といって、性格に毒があるわけでもないので積極的に好かれることも嫌われることもない、「いつも“その場になんとなくいる”人」(Aさん談)という印象の人物であった。

 その上司にはどうやら5歳くらいの娘がいるらしいのだが、真相は定かではなかった。「いるらしい」というだけで、社員の誰もその姿かたちを目にしたことがないのである。