厳しさ増す
大黒柱サムソンの経営環境

 それに加え、韓国最大企業であるサムスン電子をはじめ主要企業が一段と不安定な環境に直面していることも先行き懸念を高める要因だ。サムスン電子の売上高は韓国のGDPの15%程度に匹敵する。事実上、同社の業績が韓国経済の成長を左右するといっても過言ではない。

 サムスン電子では、李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が検察に出頭するなど、経営指揮への懸念が高まっている。また、同社は米中関係の悪化にも対応しなければならない。すでに米中は台湾の半導体受託製造大手TSMCを取り合った。米国はファーウェイをはじめ中国のIT先端分野での台頭を抑えようと制裁を強化し、TSMCはファーウェイからの受注を停止した。

 これは中国にとって痛手だ。中国は今後の世界経済を支えると期待される5G通信機器、スマートフォン、さらには高性能のICチップ分野でシェアを高めたい。ファーウェイ傘下の半導体企業であるハイシリコンは、設計面において世界的な競争力を誇る。しかし、肝心の半導体生産能力は十分ではない。台湾での生産が閉ざされたファーウェイにとって、サムスン電子の受託製造事業の重要性は一段と増しているはずだ。サムスン電子にとっても、中国の需要は業績拡大を目指すために欠かせない。

 同時に、北朝鮮の核のリスクに対峙(たいじ)している韓国にとって、安全保障面での米国との同盟関係は重要だ。冷静に考えると、韓国は安全保障面では米国との関係を維持・強化し、中国とは経済面を中心に民間レベルでの安定した関係を目指さなければならない。

 南北統一と反日姿勢を重視する文政権は、どちらかといえば、中国との関係を重視しているようにみえる。文政権に対して米国は自国を中心とするサプライチェーン網構想である“経済繁栄ネットワーク”への参画を求めている。言い換えれば、米国は韓国に自国との関係を重視するよう踏み絵を踏ませようとしている。

 当面、サムスン電子、SKハイニックス、現代自動車などの韓国主要企業は、米中間で綱渡り状態の経営を続けざるを得ないだろう。文政権が、自国産業の強化に向けた適切な政策を打っていないことも気になる。

これから
わが国がたどるべき厳しい道

 韓国が直面している状況は、日本にとって他人事(ひとごと)ではない。日本は米国と中国とどのような関係を目指すか、方針と対応策を明確にしなければならない。韓国と異なり、日本は世界のIT化にかなり出遅れている。政府の迅速かつ抜本的対応は急務だ。