『グラフのウソを見破る技術 マイアミ大学ビジュアル・ジャーナリズム講座』は、米国マイアミ大学で人気のビジュアル・ジャーナリズム講座をベースに書籍化された現代人のためのグラフ・リテラシーの入門書です。コロナ禍のニュース等を通じて、さまざまなスタイルのグラフを目にした人も多いはず。政治、気候変動、健康問題から映画の興行収入、ハリケーン進路の予想図…誰でも知っているさまざまなテーマの最新のデータを使って、ニュースをからめながらさまざまなグラフを読み解くための基礎知識を身に着けていきます。驚くことに、その多くにグラフの読み手を誤解させる仕掛けが潜んでいることに気づかされます。グーグルやEUで教えるインフォグラフィックスの世界的エキスパートがグラフ・リテラシーのノウハウを初公開! そのエッセンスをコンパクトに紹介します。

3Dグラフを見たら、「ウソついてるかも」と思いなさい!

視覚効果を使った歪曲はグラフをきちんと読んで製作できる人々にとっては笑いの宝庫だが、腹立たしくもある。

たとえば私が、わが社が主な競合他社に比べていかに成功しているかを人々に知ってもらいたくて、次のグラフを見せたとしよう。

3次元の遠近感はグラフ界の元凶だ。私が架空の事例を出して誇張していると思うかもしれないが、違う。さまざまな組織のプレスリリースやプレゼン用のスライド、ウェブサイト、報告書をざっと検索しただけで、こんなグラフが見つかるはずだ。もっとひどいのが出てきたかもしれない。これらは派手で劇的だが、とうてい情報は伝わらない。

際立った売上高? 3D棒グラフ

 

市場を支配している? 3D円グラフ

 

絶賛成長中? 3D折れ線グラフ

私の会社が市場を支配し、売上高が急増しているという言い分に理があるかどうか、グラフを見てわかるか試してみよう。難しくないだろうか? 私は都合のよいアングルを選んで成功を誇張している(ところで、これらのグラフが双方向的だったり、VR(仮想現実)機器を使って見られるのなら、話は違ってくるだろう。その場合、読者は3次元グラフの周りを移動することにより、2次元化して見ることができるからだ)。

3次元効果を使っても問題はないという考えの人も、中にはいる。棒や線の上、円グラフのセグメントなどに、元データの数字をすべて記入しようと思えば可能だからだ。いやいや、だったらなぜ、そもそもグラフにするのか? 良いグラフであれば、すべての数字を読まなくても、トレンドやパターンを視覚的に捉えやすくなっているはずだ。