文芸春秋に入社して2018年に退社するまで40年間。『週刊文春』『文芸春秋』編集長を務め、週刊誌報道の一線に身を置いてきた筆者が語る「あの事件の舞台裏」。本気で狙われたら逃げ切れないのが週刊誌の恐ろしさ。しかし中には、「スキャンダル潰し」が成功した実例もあった。(元週刊文春編集長、岐阜女子大学副学長 木俣正剛)

スキャンダル潰しの
依頼がやってきた!

週刊誌記者やカメラマンはどこまでも追いかけてきます。週刊誌の不倫取材から逃れることは、基本的には無理。しかし、時には「スキャンダル潰し」が成功することも...(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 週刊誌が本気で「不倫」を見つけたら、なかなか逃げ切れません。チームで尾行し、機材を使い…正直、諦めた方がいいと思います。

 とはいえ、何度か「週刊誌に追いかけられている。なんとかできないか?」と相談を受けたことがあります。同じ週刊誌の仲間に、「あれは私の友人だからやめてください」とお願いすることなどできません。あるとすれば、代わりに大きなスキャンダルネタを提供して、追いかけるのをやめてもらうこと。ただし、自分の部下が収集してきたネタを提供するわけにはいきません。頼んできた人に、「何か他に提供できるネタはありませんか?」と聞くしかないでしょう。

 私は、一度だけ、こんな形でスキャンダル潰しをしたことがあります。ニュースソースで親友の記者から電話がかかってきました。

「自分の親友が大変なことになっている。今、彼は大阪のホテルにいるんだけど、女子アナと一緒。不倫なんだよ。そしたら、部屋に電話がかかってきて『○○○○(写真週刊誌)です。誰々さんですよね。今、女子アナの○○さんと同じ部屋にいますよね』ということなんだけど、なんとか書かれないで済ますことはできないかなぁ」

 女子アナにも、その不倫相手にも何の義理もありませんが、ニュースソースの記者には本当にお世話になっています。それに、話を聞く限り、すでに妻とは別居していて、妻が離婚を認めてくれないとのこと。書かれれば、女子アナの立場はなくなります。

 しかし、現状はまず脱出不可能。ホテルの玄関にも勝手口(荷物を出し入れする入り口)にもカメラマンが張り込んでいるのは目に見えます。