マット・ニューイさん(23)は4月下旬、亡くなった祖母の自宅を片付けていて感情がこみ上げてきた。祖母の香水に手を伸ばしたが、何も匂いはしなかった。「祖母が大好きで、最後にもう一度、どんな匂いだったかを思い出そうとした」とニューイさんは話す。「その記憶を失った気がして、つらかった」。彼は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかり、3月に回復した。臨床現場ではこの感染症の理解に努めているが、通常とは異なる傾向が明らかになり始めた。嗅覚や味覚が失われる一般的な症状が、回復後ずっと治らないケースがあるのだ。医師らによると、嗅覚や味覚を2度と取り戻せない可能性もあるという。欧州耳鼻咽喉科学会の学術誌ヨーロピアン・アーカイブス・オブ・オートライノラリンガロジーに4月に公表された調査によると、欧州のCOVID-19軽症・中等症患者417人のうち、味覚と嗅覚の障害を訴えた人はそれぞれ88%と86%だった。
コロナで失った味覚や嗅覚、戻らないケースも
感覚の喪失で回復の道筋が一段と複雑に
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