そんな中にあって、居住エリアは職住近接、つまり勤め先に近いところに住む傾向が、バブル経済崩壊後の一貫したトレンドだった。都市圏では職場に通える場所に実家があっても、自分が稼ぐようになると1人暮らしをしたがる若い人は多い。これを「世帯分離」と私は呼んでいるが、単身者数の増大によって1世帯当たりの人員は直線的に下がり続けている。増え続ける単身者のニーズが職住近接だったわけだ。

 しかし、職場に行く必要性が薄れると、通勤自体が少なくなる。そこで「人は職場の近くには住まなくなるのではないか」という説を唱える人が出てくる。もっともらしく聞こえるが、人が住む場所を選ぶ際の基準は職場だけではない。職場以外に「友達とよく会う場所(いわゆる遊び場)」「よく行く店」「実家」「出張」などを総合的に考えて判断している。

 それらの場所も、繁華街・ターミナル駅などになり、職場と大して変わらない場所にある。人の行動半径は狭く、近場で済ませたいと思うものだ。それはスーパーの方が安いと知りながら、コンビニが増え続ける理由でもある。単身者が増え続ける以上、都心回帰傾向は変わらないと考えている。

住宅価格は家賃が決める
恐怖が遠のけば光は見える

 借家の解約は1~2カ月で終わり、退去できる。空室率が上がると、家賃が下がり始める。家賃が下がると、売買価格も下がる。不動産の価格は、そこから生まれる賃料収入で取引されるからだ。需要が減った空港や観光地では、今後不動産価格の調整があろう。

 その一方で、家賃が上がる理由は人口密度が高いところであるという事実がある。「三密」を敬遠する意識が当分続くものの、ワクチンや薬の開発が進んで人が感染症の怖さを忘れるときが来ると、風向きは変わる。それが短期で起こることを、私の願いとして最後に記しておきたい。

(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖有人)