経済成長目標が
出なかった理由

 例年の全人代で最も注目されてきたのは、経済成長目標だ。GDP比で何%成長させるつもりなのかを知ることで、中国政府の経済政策の全体像がおぼろげに見える。

 ちなみに、2017年と2018年は6.5%前後、2019年は6~6.5%に設定され、いずれも達成されている。

 先述したように2020年は目標が掲げられなかったが、これは19年ぶりのことだ。

 このことについて、「新型コロナウイルスのパンデミックの影響で先々が読めないから」と説明されることが多かったようだが、おそらくそれだけではないだろう。

 そもそも中国政府は先を読んで目標を設定しているというより、「これくらい成長させないと、国内が安定しない」という目標を出して、それに向かってつじつまを合わせているだけのことである。

 では、今年はなぜ成長目標を出さなかったのか。

 それは、達成可能な経済目標を出すと、かなりショッキングな数字になるからではないだろうか。

 2020年の第1四半期がすでにマイナス6.8%であり、2020年はマイナス成長を予測するエコノミストも出ている。

 だが、全人代で「経済成長目標1%」といった具体的な数字を出すと、達成できない可能性もあるばかりか、習近平指導部の威信にも関わり、低成長の直接の原因である新型コロナウイルス拡大の責任も問われかねない。

 実際、李克強首相も経済成長について聞かれて、「プラス成長を確保する」としか答えられなかった。

 その代わりに出してきたのが、都市部の失業率を6%前後に抑えるという目標だ。

 だが、これについては、出稼ぎ労働者が失業すると故郷の農村に帰ることが多いため、失業率は実態ほどは増えないというカラクリがある。