これまでの韓国の外交といえば、北朝鮮との関係で国際社会の中でいかに立ち回るかを考えるのが主たるものだった。

 韓国はいまだに北朝鮮に対し、卑屈に対応するだけで、一言でも北朝鮮が反発すればすぐに折れるという姿勢を繰り返している。つい先日も、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第一副部長が、韓国の脱北者団体が北朝鮮に向けて飛ばしている体制非難のビラを問題視し、南北軍事合意の破棄に言及したところ、青瓦台はすぐに「ビラは百害無益な行動」であり、「安全保障に危害をもたらす行為には断固対応する」と、北朝鮮におもねるような声明を発表した。

 国際社会は北朝鮮への対応で核ミサイル開発をいかに阻止するかを最重要視しているが、文政権はその足並みを乱しているだけではなく、対北朝鮮外交の本質を見失っている。

 G7サミットに、米国が中国周辺の4カ国を招待した意図は明白である。中国も「中国包囲網の形成」だと反発している。韓国は米中の狭間でどう動くつもりだろうか。米国が中国のファーウェイ製品の使用自粛を求めたとき、文政権は対応せず、右往左往するだけであった。「G7+4」の場で韓国の外交の実力が見えるだろう。

日韓関係は最悪の状況に突き進んでいる

 文政権の外交でもっとも極端なのが日本に対する政策である。産業資源通商部は5月12日、月末を期限として日本に輸出規制の撤回を迫った。

 韓国としては、輸出管理の人員と組織を充実させるなどの体制整備を図ったという自負があったのだろう。しかし、実際の運用面で懸念が晴れなかったことから、日本は韓国側の要望に応じなかった。

 すると韓国はWTOへの再提訴を行った他、昨年米国も巻き込んで大騒ぎになった軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了もちらつかせた。

 ただ、WTOに提訴しても最終審査までには2年以上必要とされ、上級委員会も機能を停止していることから、提訴の実効性は乏しい。また、GSOMIA終了は米国が強く反対していることから、直ちに実行は難しいだろう。

  そこで、韓国は次の手段に踏み切った。それが元徴用工に関連する日本企業の資産の現金化の手続きをさらに進めるための裁判所の公示通達である。これは裁判所に掲示するか官報に公告することで、裁判を進めることを可能とする制度である。

 これは行政府ではなく裁判所の動きであるが、輸出規制で日本が譲歩しなかったことを受けて突然出てきたことから、大統領の意向を反映していることは間違いないだろう。

 日本政府は、日本企業の資産の現金化は国際法違反の状態を一層悪化させるものであるとして報復を匂わせているが、文政権はそれでも現金化が最も効果的な手段だと勘違いしているのだろう。現金化が行われれば、双方の報復の連鎖によって日韓関係は最悪な状況に陥るだろう。文政権の、相手国の意向を無視して強引な政策で自己主張するという悪弊は、依然として治らぬままである。