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高市政権は「責任ある積極財政」を掲げ、従来の「PB黒字化」に代えて2026年から新たな財政健全化指標「政府債務残高対GDP比」の導入を目指す。なぜいま新財政目標なのか。提案者で経済財政諮問会議の民間議員に就任した永濱利廣・第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミストに、狙いやその意味合いを寄稿で明らかにしてもらった。
新たな財政目標と指標導入の狙いは
成長重視とフローよりストックの視点
筆者は、日本の財政目標の議論で、新たな視点を取り入れた指標の採用を提唱してきた。それが、今回、経済財政諮問会議で提案した「政府債務残高対GDP(国内総生産)比」だ。
また、債務残高対GDP比を低下させる財政運営に必要な参照指標として、これまでの基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)に加えて「長期金利と名目経済成長率の差」などを取り入れることを提案する。
新たな財政目標は、長いデフレからインフレ局面に変わった日本経済の現状と将来の課題をより正確に反映し、財政運営の柔軟性と実効性を高めることを目的としている。
債務残高対GDP比の低下をめざすのは、分母のGDPを増やす成長重視の考え方からだ。
また、従来の政府の財政健全化目標であるPB黒字化が年間のフローをとらえた指標なのに対し、新たな財政指標は政府債務残高の一方になる将来の成長に資する実物資産や金融資産にも目を当てたストックをとらえる指標だ。
フローの収支の黒字か赤字で一喜一憂するのではなく、長期的なバランスシートを重視するものだ。
この新たな指標を加えることにより、経済財政運営を、緊縮から成長重視へと転換するとともに、長期的に財政の持続性の維持を両立できると筆者は考えている。
高市政権は「責任ある積極財政」を掲げるが、新財政指標はそれを進める羅針盤になり得る。そしてその成功の鍵となるのは、「質の高い成長投資への重点化」と、その効果を担保し、安易な財政膨張を防ぐ「日本版DOGE(政府効率化省)によるチェック機能の強化」だ。







