
一連の損害保険業界の不祥事を経て、業界のルールが大きく変わりつつある。2025年5月には改正保険業法が成立し、同8月末には過度な便宜供与や出向などに関する監督指針の改正が行われた。次は、比較推奨販売の見直しの番で、26年春ごろまでには方向性が決まりそうだ。そこで連載『ダイヤモンド保険ラボ』の本稿では、損害保険協会長を務めるMS&ADインシュアランス グループホールディングスの舩曵真一郎社長グループCEOに26年に最も注力することに加え、比較推奨販売への対応や、MS&AD傘下の国内損保2社の合併の進捗状況などについて話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 藤田章夫)
代理店と保険会社のいびつな関係を打破
業界を挙げて「信頼回復」に取り組む
――2026年に向けて、最優先に取り組むべき課題は何でしょうか。
最も注力すべきは、信頼回復です。今年は日本損害保険協会長を務めていますが、協会としても「顧客本位の業務運営の徹底」と「健全な競争環境の実現」をあらゆる活動の根幹に据え、取り組みを進めているところです。
まず、顧客本位の業務運営の徹底に向けて、代理店業務品質評価制度を構築しています。業界共通で策定した171項目に上る「自己点検チェックシート」を基に、代理店と保険会社が対話を重ね、業界全体で業務品質の向上に向けて取り組んでいます。また、有識者などから構成される「代理店業務品質評議会」を設置し、中立的な第三者の立場でモニタリングを実施して実効性を高めていきます。
これらは、一連の不祥事で発覚した代理店と保険会社のいびつな関係を打破するための「一丁目一番地」の取り組みと位置付けています。全ての関係者が、業界全体、そして保険会社そのものの在り方を変える覚悟を持って取り組まなければなりません。
――後者についてですが、いわゆるカルテル問題で露呈した不健全な業界慣行を改善するために「健全な競争の実現」を金融当局から求められています。どのように実現していきますか。
特に企業保険マーケットにおいては、これまで政策株の保有割合などによって保険のシェアが決まっていましたが、保険本来の機能である商品やサービスで競い合う市場環境を整備する必要があります。一方、企業側も自らのニーズに沿った商品やサービスを正しく選択できるように、リスクマネジメント意識の向上に取り組んでいただく必要があります。そこで、リスクマネージャーの存在意義を高めるために、資格制度を早期に立ち上げるべく検討を進めています。
もっとも、信頼回復はゴールではありません。次の成長に向けた出発点であり、保険が真に必要とされる存在であり続けるために、業界一丸となって取り組んでいきます。
――複数の保険会社の商品を取り扱う乗り合い代理店において、比較推奨販売のルールの見直しが検討されています。これに対する受け止めと、今後の方針についてお聞かせください。
複数の保険会社の商品を取り扱う乗り合い代理店は、顧客の意向に沿って商品提案を行うというルールがあるが、26年には大きく見直される予定だ。その方向性や考え方について舩曵社長に聞くとともに、こちらもルールの見直しが予定されている企業内代理店の在り方や、MS&AD傘下の国内損保2社の合併に向けた進捗状況について語ってもらった。







