多くの人が在宅勤務を強いられるようになって約2カ月がたつ。この間、心身の不調や家族間のいさかいによるストレスを訴える人たちが目立ち、「コロナうつ」という言葉も生まれた。緊急事態宣言がようやく解除されたものの、在宅勤務がいきなりなくなるわけではないし、在宅勤務を部分的に取り入れようとする企業も出てきている。在宅勤務を快適に続けるためにはどうすればいいのか。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)
自宅に心地よい
居場所がない
今回のコロナによる在宅勤務によって浮上してきた重大な問題のひとつが、多くの人たちにとって自宅が心地よい居場所になっていないということである。
もし自宅が心地よければ、在宅勤務は何よりもうれしいことのはずだ。なにしろ過酷な通勤電車に乗る必要もなく、数時間に及ぶ往復の通勤時間が節約でき、心地よい自分の居場所で長い時間を過ごすことができるのだ。
在宅勤務が大きなストレスになり、心身の不調がみられるようになるということは、自宅が心地よい居場所になっていないことの証拠といってよいだろう。
そこで強調したいのは、日頃から自宅を自分にとって心地よい居場所にしておくことの大切さである。
定年後のうつの問題も、職場だけを居場所にしていた人が長年通い続けた職場という唯一の居場所を失うことによって生じる。
それゆえ、在職中から職場だけでなく自宅にも居場所をつくっておけば、在宅勤務のストレスを防げるだけでなく、定年後のストレスも防ぐことができる。