ソウルで山中に拉致されながら
ライオン崔の説得に成功!

 先方はとにかく飲みます。飲みながら、我々の質問にポツリポツリと答えたり、はぐらかしたり。2晩目か3晩目になって、ようやく「君たちは本当に具志堅と金平ジムを告発するつもりなんだな」と口にすると、オレンジはおかしいと思って食べなかったことなど、いろんな話をし始めました。Iさんが目配せするので、私は隠しテープをとります。当時のテープはカセットテープ。それも大体30分しか持ちません。

 30分するとカチッと音がしてバレるので、その前にトイレにいっては、カセットを変える作業をして、これで十分真相がつかめたと安心して眠った、その翌朝のことでした。

 突然、屈強な男たちがホテルの部屋に乱入してきました。パスポートは取り上げられ、Iさんと私は別々に車に乗せられて、ソウルの山の中を彷徨しました。

 その間も、彼らは「やはりお前たちはスパイだった。隠してテープとっていただろう」とテープを取り上られます。まあ、30分おきにテープを変えにトイレに行っていたのですから、バレて当然といえば当然です。

 チラッと車の隅を見ると、拳銃らしきものまで置いてありました。正直、ここで殺されるのかなぁとも思いましたが、あまりにドラマみたいで実感がありません。淡々と自分たちの意図を説明していると、突然、ライオン崔の声が和らぎました。

「試してみたけど、お前らホンモノだな。一緒に金平と戦おう!」

 その夜の酒盛りは前にも比べて激しいものになりました。その後、日本に帰った私は、広島のホテルで具志堅の対戦相手のステーキに睡眠薬を振りかけたコックに取材。コックもそれを認めました。調剤した薬局店主や、そのクスリの配合を決めたボクサーの医師などが次々に関与を認め、キャンペーンは5週にわたり続きました。