軍人の方が
政治家より慎重だった例も多い

 後任のマシュー・B・リッジウェイ大将が冷静で米軍を立て直したから、米・韓軍はソウルを奪回し、何とか引き分けの形で停戦となった。

 リッジウェイ大将はその後米陸軍参謀総長となったが、フランスが負けて撤退した後のベトナムに米国が介入するのに反対、大統領のドゥワイト・D・アイゼンハワー元帥と対立して、1955年に退役した。シンセキ大将と似た名将だ。

 政治家が軍を統制する「シビリアン・コントロール」は、軍人の暴走を防ぐ効果がある場合もあるが、政治家が国民感情に迎合して強硬な対外姿勢で人気を得ようとし、優秀な将軍が戦争に慎重だったという例も少なくない。

コロナでの初動の失敗
中国、WHOを「敵」に

 トランプ大統領はマッカーサーを崇拝しているが、責任転嫁の癖があることでは2人は似ている。

 新型コロナウイルス問題では、武漢の衛生当局が昨年12月31日「原因不明の肺炎が27例発生、うち重症7例を確認」と、WHO(世界保健機関)に通報、日本の厚生労働省も受信していた。

 台湾はただちに厳重な防疫態勢を取り、感染者は443人、死者7人で食い止めた。

 当然、米国にもこの情報が入っていたはずだが、米国が「14日以内に中国に渡航歴のある外国人の入国を禁止」と発表したのは2月2日で、対象は外国人に限られていた。

 中国は1月20日に人から人へ伝染することを確認、23日に武漢市を閉鎖した。

 米国では21日に最初の感染者が出ていたが、トランプ氏は24日のツイッターで「中国は多大の努力をしている。米国は中国の努力と透明性に深く感謝している。すべてうまく行くだろう。米国民を代表し、特に習国家主席に感謝したい」と述べていた。

 コロナ問題を対岸の火事視して楽観論を唱えていたトランプ氏は、米国で感染者、死者が激増する事態に直面して狼狽し「中国が隠蔽したからこうなった」「WHOが中国寄りだからだ」などと、責任を中国などに転嫁しようとしている。

 中国への損害賠償要求を口にし、WHOから脱退するなど、その言動はマッカーサー元帥が朝鮮での大敗はトルーマン政権の責任と言ったのとよく似ている。

「政治上の正しさ」と
差別感情が交錯する世論

 新型コロナウイルスで米国ではすでに約190万人の感染者、約11万人の死者が出て、失業者は4000万人に達する。

 この大惨事のさなか、白人警官が黒人を死なせた事件に対する抗議デモが全国に広がり、トランプ氏はそれに対し軍を投入して制圧するような発言で火に油を注いだから、台風と地震が同時に来たような難局に陥った。