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スマートフォンの理想と現実

ゲームのルールは変わった――アップルvsサムスン訴訟の評決が意味するもの

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第32回】 2012年8月30日
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 これが本当に正しい道なのかは、今回の係争を経て、十分な検討が必要だろう。米国でも今回の係争は「やりすぎ」という声が一部から上がっているようだし、グローバル企業同士の「知財の取引」や「事実上の宣伝」に、米国の法廷(を維持する米国民の血税)が使われているという怨み節も、ぼちぼち聞こえてくる。

 こうした激しい競争環境に、日本企業も当然巻き込まれている。鴻海精密工業がNECの液晶ディスプレイの特許を購入することで合意したと報じられたが、こうした動きは今後多くの分野で加速するだろう。また鴻海のように紳士的なアプローチではなく、人材を札束で買い漁るという方法は、すでに以前から進んでいる。

 一方で最終製品の市場では、特にスマートフォンに関しては残念ながら出る幕がなく、ポジションはおろか徐々に存続さえも危うくなってきている。状況の挽回には相当の苦労が必要だろうし、これからも「大量の血」が流れることだろう。

 しかしそれでもなお復活を目指そうとするとき、どのように生き残れば社会全体にとって望ましい姿なのか――そうした理念を持ち合わせてこそ、生き残る価値のある企業となるはずだ。生死を前にして青臭い議論であるのは重々承知の上で、そんなことを考えるきっかけとしても、今回の係争に引き続き注目したい。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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