グローバルのユニコーン企業と協働・共創する<br />「ジャパンプラットフォーム」が目指す世界<br />
アビームコンサルティング 執行役員  戦略ビジネスユニット長
宮丸 正人
Masato Miyamaru

アビームコンサルティング執行役員ならびに戦略ビジネスユニット長。上場金融会社の企画部門、戦略部門ヘッドを歴任した後、投資銀行の取締役(CFO)を経て、2012年にアビームコンサルティングに入社。上場企業の買収、中期戦略の策定、大型プロジェクトファイナンスの組成、企業投資など、事業会社と投資銀行双方で、さまざまなプロジェクトを推進。専門は、企業戦略と競争戦略、企業買収と企業再編、新規事業開発とイノベーションなど。

宮丸:VMF2を組成するに当たり、バーテックス、リサ・パートナーズ、アビームコンサルティングは、海外スタートアップと日本企業を引き合わせ、技術開発や資本提携を支援する「ジャパン・プラットフォーム」というコンソーシアムを組成しました。

 ご承知の通り、多くの日本企業がイノベーションに取り組んでいますが、なかなか思うような成果に結び付かない。このコンソーシアムは、日本企業のオープンイノベーションを加速し、日本産業界の潜在力を発現させる枠組みにほかなりません。 

 このジャパン・プラットフォームは、日本企業による海外スタートアップへの投資やマッチングの機会を提供するだけでなく、スタートアップとのパートナーシップやオープンイノベーションを通じた、日本企業の「共創力」の変革にも寄与します。

テオ:このコンソーシアムの狙いは、IT業界や既存産業の枠を超えて事業展開しているスタートアップ――バーテックスのファンドの主要な出資先でもあります――と日本企業が出会い、新しいビジネスモデルやイノベーションの共創の場となることです。

 バーテックスのグローバルネットワークを活用し、各国のスタートアップと日本企業とのマッチングを後押しし、日本企業のマーケティング力、技術力や資金力、そしてスタートアップならではの発想力や創造性、イノベーション力を組み合わせていく。

グローバルのユニコーン企業と協働・共創する<br />「ジャパンプラットフォーム」が目指す世界<br />
リサ・パートナーズ シンガポール現地法人 取締役会長
チュア・テック・ヒム 
Chua Taik Him

リサ・パートナーズ・アジア(リサ・パートナーズのシンガポール法人)会長。1985~92年の間、駐日シンガポール大使館経済参事官として日本に駐在。シンガポール経済開発庁副長官、シンガポール国際企業庁の副長官を得て、現在エンタープライズ・シンガポール(旧シンガポール国際企業庁)のシニアアドバイザー。2019年4月より現職を兼ねる。東京大学工学部卒業。カナダのトロント大学でMBAを取得。ハーバード・ビジネス・スクールのAMP(Advanced Management Program)を修了。

チュア:少し補足させてください。我々はシンガポールを基点にして、企業規模を問わず、さまざまな国の企業活動に関わってきました。アジア全体を眺めてみると、ほとんどのアジア諸国では、ビジネスチャンスが湧き出ているものの、起業したくても金利が高く、また生産資本の不足やインフラの未整備という状況がある。一方、日本はマイナス金利で資本コストが非常に低い。しかし、なかなか投資が進まない。また日本の中小企業は優れた技術や能力を備えているところが少なくありませんが、国内に留まっています。何とももったいないことです。

 こうしたジレンマを抱えた両者が手を携えれば、問題が解決されるばかりか、素晴らしいサムシングニューが生まれてくる――。そう考えるのは、ごく自然なことではないでしょうか。

 規模にかかわらず、イノベーション活動やスタートアップとの協業でつまずきがちな日本の大企業や中小企業にとって、コンソーシアムに参加することのメリットは何でしょう。

テオ:バーテックスには、立ち上げたばかりのアーリーステージのスタートアップで構成されているファンドが5つ、成長軌道に乗り始めた伸び盛りの企業で構成されるファンドが1つあります。

 このように、今後可能性のあるスタートアップへの出資が大半を占めていますから、繰り返しになりますが、日本企業が我々のコンソーシアムに参加することで、フレッシュかつユニークな起業家たちと共創する機会にあずかれるはずです。

チュア:こうした協業や共創の過程で、日本企業は新しい「成長エンジン」を手に入れることでしょう。また、デジタル・トランスフォーメーション(DX)にも拍車がかかるのは間違いありません。

 実は、日本の大企業だけでなく、中小企業の皆さんにも、このコンソーシアムに参加してほしいと思っています。実際、日本の中小企業も、隠れた技術力や組織力を持っています。

 ご承知の通り、アジア市場は着実に伸びています。しかし、多くの中小企業が、その優秀な技術力や能力にもかかわらず、発注先である国内の大企業に依存し、国境を超えて新しいパートナーを探すことに消極的です。これでは、さらなる成長など望むべくもありません。

 繰り返しになりますが、スタートアップは、ユニークな発想や技術のシーズを持っていますが、それを花開かせるだけの資金やリソースがありません。大企業の皆さんだけでなく、ぜひ中小企業の方々にも、彼らとのコラボレーションをお願いしたい。それは、間違いなくウイン・ウインになるはずです。

 また、手前味噌になりますが、リサ・パートナーズは、アジアにおいて資産管理やプライベート・エクイティ・ファンド、中堅・中小企業のファイナンス(資金調達)に関する知識やノウハウ、そしてグローバルネットワークに自信を持っています。ですから、新規市場の開拓、ビジネスモデルの創造や改革について、大企業はもとより中小企業にとってもシナジー効果を提供できると確信しています。