チュアさんが通われたハーバード・ビジネス・スクール名誉教授のジョン・コッター氏は、四半世紀以上にわたって「経営者の仕事は変革である」と訴えてきました。また、先頃他界されたジャック・ウェルチ氏も「リーダーシップの本質は変革である」と主張しています。
チュア:イノベーション活動に取り組むに当たっては、外部環境に適応すべく、ビジネスモデル改革、新しいビジネスモデル開発に着手することになりますが、並行して、組織内の改革、具体的には組織風土改革、人事や業績評価、財務・経理、現場リーダーシップやマインドセットなどの改革も必要です。
大企業の多くは、これまで幾多の荒波を乗り越え、成功と失敗を重ねてきました。現在の企業文化や価値観、マネジメントシステムは、そうした中で形づくられた歴史の産物にほかなりません。改革が待ったなしだといわれても、一朝一夕にはいきません。
このような現実があるとはいえ、先延ばしにはできません。いまやらなければならないのです。当然、抵抗やハレーションが起こるでしょうが、先人たちも同じ課題に直面し、乗り越えてきたからこそ、いまがあるわけです。これまでは、現在のような大変革は少なかったかもしれませんが、世界の情勢を見る限り、これからは変革し続けなければならない時代のようです。
宮丸:企業変革、最近ではDXという文脈で語られていますが、大企業も中小企業もその必要性を十分認識しています。DXの核となる、新規事業開発、ビジネスモデル変革、あるいはイノベーションの創発には、何らかのパートナーシップが不可欠です。それはM&Aかもしれないし、ジョイントベンチャーかもしれない。
実のところ、大企業には、そのような経験がけっこうあるはずなのですが、組織能力として身についているかというと、必ずしもそうではない。ですから、いまなお成功例よりも失敗例のほうが多い。プロジェクトの責任者は、さまざまな課題や難問に直面するでしょうが、現場と現実の中でビジネスパートナーと対話し、実体験を通じて学習していくしかない。その時、コンソーシアムは非常に効率的かつ効果的な実験室でもあるのです。
そして、新規事業プロジェクトでは、何よりトップマネジメントのコミットメントが不可欠です。つまり、自分事として受け止め、絶対成功させるという強い意志と覚悟が必要なのです。このようにトップマネジメントを動機付け、鼓舞するのは、内部の力だけではなかなか難しい。そこで、我々のようなアウトサイダーの出番であり、コンソーシアムというスキームも活きてくる。
長らく日本企業のM&Aやジョイントベンチャーを支援してきましたが、たとえば報酬で折り合わない、意思決定など経営のスピードが違うといった問題がよく起こります。そこで、ならばスタートアップを買収しようというケースがあるのですが、パートナーシップの能力が低い組織では、うまくいきません。とはいえ、こうした組織能力はすぐには育ちません。
スタートアップの力と大企業の力を有機的に混ぜ合わせ、まさしく共創のステージへと後押しし、新しい価値、独自の価値が生まれてくるプロセスをデザインする。言うほど簡単な仕事ではありません。ですから、我々のような第三者の存在意義があるわけです。
バーテックスのベンチャーファンドには、有望なスタートアップが揃っているだけでなく、彼らのビジネス・ディベロップメント・チームから、情報をはじめ、ノウハウやドゥハウ、人脈、そして双方の理解を深める十分なコミュニケーション機会も提供されます。
もちろん、コンソーシアムですべて解決できるわけではありません。いかにスタートアップが有望でも、彼らと何をするのか、また何を成し遂げたいのか、現状ならびに今後どのような課題があるのか、具体化できている企業は少ない。こうしたパーパスのつくり込みなども、もちろんお手伝いしますし、こうした重要なメッセージをスタートアップに伝えて、共感を醸成していくヒューマンタッチなプロセスにもしっかり伴走していきます。
経営は実践です。ですから、一度、我々のコンソーシアムに参加してみてください。
- ●聞き手|『ダイヤモンドクォータリー』編集長 岩崎卓也 ●構成・まとめ|奥田由意
●撮影|佐藤元一