「柔」「川の流れのように」「悲しい酒」「真赤な太陽」「リンゴ追分」など、数多くのヒット曲を持つ国民的歌手、美空ひばりが亡くなったのが1989年6月24日。没後30年となった昨年末のNHK紅白歌合戦で「AI美空ひばり」が登場し、賛否両論を巻き起こした。幅広い世代に受け入れられた美空ひばりにあって、「AI美空ひばり」にはない決定的なものとは何だったのか。(国際政治評論家・翻訳家 白川 司)
冬の時代の
美空ひばり
「あら、いばりが出ているのね」
小学生の私が歌番組を見ていると、炊事の途中で居間に用足しに来た母が言った。テレビには美空ひばりの顔がアップになっていた。
母は当時、美空ひばりを「いばり」と呼んでいた。