さだまさしさん

通算46枚目のアルバム『存在理由~Raison d’être~』を5月20日にリリースする、歌手のさだまさしさん。今年68歳の誕生日となった4月10日には、オフィシャルYouTubeとLINE LIVEで「緊急事態宣言の夜に」を発表し、大きな話題を呼んだ。新型コロナウイルスの感染拡大で経済もエンタテインメントの世界も危機に瀕しているいま――さださん自身の新作アルバムに寄せる思いと、いまこの時代に対する考え方・生き方を聞く。(取材・文/山西裕美〈ヒストリアル〉 撮影/菊地英二)

*本稿は、現在発売中の『テレビ・ステーション2020年11号』(ダイヤモンド社刊)掲載のインタビューを大幅加筆修正したものです。

メッセージを送る側とキャッチする側――
「僕のファンは本当にいいキャッチャーなんです」

 さだまさしさんの音楽活動は今年で47年目。毎年、コンスタントに全国各地を回っているコンサートツアーは、どこも大盛況だ。

「どのコンサート会場にもたくさんのお客さんが来続けてくれて、われながら不思議な存在だと思いますよ(笑)。皆さん何がよくて来てくださるのかわからないから、演奏もトークもめいっぱいやっちゃう。だからどんどんコンサートが長くなっていく(笑)。すでに僕の作った曲は、600曲近くあります。コンサートの最中にお客さんに『みんな、新曲、本当にいる?』って聞くんですよ。そしたら、客席から、大きな声で『いるー!』って返ってくる(笑)。ファンの方々は僕がいま何を考えているか、いま何を伝えたいかをキャッチボールしたいんだな、と思うんです。メッセージを送る側とキャッチする側の、お互いの守備位置がしっかりとできているんです。いいキャッチャーがいればピッチャーも投げやすい。僕のファンは本当にいいキャッチャーなんです」

 今年3月に放映された「緊急企画 泉谷・さだの“ふんばれ!ニッポン”」も大きな反響を呼んだ。ここ最近では、ヒット曲「関白宣言」をベースにした「にゃんぱく宣言」(ACジャパン)の流れるテレビCMも見ない日はない。テレビに出演しないアーティストも多いなか、さださんは、デビュー以来、数多くのテレビ番組にも出演している。

「テレビに出演することに対しては、グレープ時代から迷いはなかったですね。テレビに出ないほうがカッコいいと思ったこともなかった。僕には『どうやって自分のメッセージを伝えるか』という思いが強かったんです。たくさんの人が見ているテレビで、自分のメッセージを伝えられるわけですからね」