浦和レッズ浦和レッズサポーターの熱さはJリーグ随一だ Phoro:Hiroki Watanabe/gettyimages

ファン・サポーターが待ち焦がれる公式戦の再開まで、いよいよカウントダウンに突入したJリーグで衝撃的な数字が明らかになった。群を抜く集客力を誇る浦和レッズが、10億円前後の赤字を計上する苦境に直面していることを公表した。来春に承認・発表される今年度決算の見通しを、このタイミングで公表したのはなぜなのか。他のクラブとは一線を画すレッズの事業構造や熱気あふれる浦和という町との密接な関係、そして再開後の「リモートマッチ」における横断幕掲出禁止に真っ向から異を唱える理由を含めて、背景にある事情をあらためて探った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

Jクラブ随一の集客力を誇る浦和レッズ

 浦和レッズと聞いて何を連想するだろうか。サッカーファンなら、真っ先に脳裏へ浮かび上がってくるのはチームカラーの赤で染まった、約6万2000人を収容するホームの埼玉スタジアムの壮観な光景だろう。

 特にメインスタンドから見て左側のゴール裏スタンドは、熱狂的と形容されるファンとサポーターが集結。一体感を伴った応援でレッズにパワーを、対戦相手には威圧感を常に与えてきた。

 Jクラブの中で他の追随を許さない集客力を数字でも証明している。昨シーズンまでの27年間で、最多観客数を記録したのが実に20回。悲願のJ1初優勝を成就させた2006年シーズンからは14年連続で1位に君臨し、クラブの売上高にあたる営業収益の二本柱の一つ、入場料収入を押し上げてきた。

 レッズは19年度決算で、クラブ史上最高額となる82億1800万円の営業収益を計上。そのうち入場料収入は23億円と約28%を占めていた。レッズを除いた各クラブの平均が約18%であり、金額では2位横浜F・マリノスの12億8600万円を大幅に超えている。

 Jリーグの歴史上で、今も最多記録として眩い輝きを放つ年間80万9353人、1試合平均4万7609人をマークした08シーズンからは残念ながら数字を落としている。それでも昨シーズンのレッズがマークした年間58万1135人、1試合平均3万4184人はともにJ1最多だった。

 迎えた今シーズンは、入場料収入が激減する状況が避けられなくなっている。新型コロナウイルスの影響で4カ月あまりの中断を強いられたJ1は、来月4日に開幕節以来となるリーグ戦を、無観客試合という呼称が「リモートマッチ」に改められて迎えることが決まっている。

 レッズは王者マリノスを無人の埼玉スタジアムに迎えるが、対戦相手によっては1試合当たりで1億円が見込める売り上げが当然ながらゼロとなる。リモートマッチでの再開は政府が定める「イベント開催制限の段階的緩和の目安」に従ったもので、7月10日以降は5000人または収容人員の50%で数が少ない方を、8月1日からは収容人員の50%を上限として順次観客を入れていく。