岩本仁・マッキニーロジャーズ代表取締役
岩本 仁・マッキニーロジャーズ代表取締役

新型コロナウイルス感染症という目に見えない敵と対峙しながら、事業を成長させなければならない企業のリーダーは、何を心得ればいいのだろうか。そのヒントを得るために、英国海兵隊式リーダーシップのメソッドを生かした、組織マネジメントのコンサルティングを行うマッキニーロジャーズジャパンの岩本仁代表に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 片田江康男)

コロナ時代に生き残る
不可欠なマネジメント手法

――御社は、今こそ企業の経営者や現場の管理職は英国海兵隊式のリーダーシップ手法を習得して、生かす時だと説いています。その理由を教えてください。

 この先、私たちは新型コロナウイルスと共生することが前提となります。コロナが流行し始めた時を思い出すと、毎日ものすごいスピードで事業環境が変化し、情報も錯綜していました。同時に、急速に日々の業績が悪化していく。こうしたことがいつでも起こり得る状況が、今後も続くということです。

 私たちはリーマンショックや東日本大震災などの危機を経験してきましたが、今回の危機は次元が違います。情報をいくらとっても先が読めないし、やっとつかんだ情報はすぐに変化してしまいます。例えば東京オリンピック・パラリンピックは来年に延期されました。企業はその前提で準備を進めるでしょうが、実際に本当に開かれるのか、誰も分からないですよね。

 こうした状況は、テロリスト戦と共通するところがあります。テロリストは自爆なり地雷なり、常に新しい方法で攻撃を仕掛けてきます。つまり先が読めない、敵が見えない、戦いの変化が読めないということです。さらに命が懸かっているところも、新型コロナウイルスとの戦いでは共通しています。

 英国海兵隊は長年にわたる戦闘経験から、変化の激しい環境で、見えない敵と戦い、生き残るための組織マネジメント手法を確立させてきました。その軍隊の組織マネジメント手法を、企業マネジメントに応用したものが「ミッションリーダーシップ」です。

 ミッションリーダーシップが生まれた背景や特長は、コロナ時代に企業が生き残るために不可欠なマネジメント手法だといえるのです。

――ミッションリーダーシップを導入するというのは、何か軍隊的なルールや文化を企業に植え付ける、ということなのでしょうか。

 決してそういうことではありません。

 ミッションリーダーシップは、組織の力を最大限引き出すための手法です。もう一歩分解してみると、企業や組織の「ミッション」と「制約」を簡潔化・明確化すること。これが根幹です。そして、これを組織の中で「習慣化」させることを目指します。

 ミッションと制約の簡潔化・明確化ができると、組織の一人一人の力を引き出せるようになります。さらに組織として事業を進めるスピードが上がります。組織は予期せぬ危機に直面しても、全員が同じ方向を向いて、進むことができる強い組織になります。逆にそれらが不明確だと、どんなに優秀な人でも指示を出しても動かないし、動けない。

 これは戦場でも同じです。当社のCEO(最高経営責任者)で英国海兵隊将校でもあったダミアン・マッキニーはこう言っています。「簡潔なものは実行される」。彼が言うには2003年3月、イラク戦争に従軍したとき、主力部隊指揮官の左胸のポケットには、A4一枚の紙しか入っていなかったそうです。何百ページにもなる作戦資料を簡潔にまとめたものでした。

 また、ダミアンは「抽象的な計画は死をもたらす」とも言っています。作戦が不明瞭だと、どんな行動も認められてしまい、戦場の兵士は混乱して部隊は壊滅してしまいます。

 戦場で作戦が書かれた分厚い書類をめくっていたら、最前線の兵士に指示は出せませんよね。