しかし、今回の名古屋地裁判決には、「生活保護費は自民党が決める」「生活保護費に国民感情や財政事情が反映されるのは当然」という、驚くべき内容がセットになっていたのである。原告たちとともに訴訟に臨んできた弁護士たちからは、「最悪」「最低」という怒りの声が漏れた。

 筆者自身は「あまりにもあんまり」「これはひどい」といった感慨しか湧かず、数時間にわたって呆然としていた。単純な「不当判決」ではない。その、はるか斜め上だ。

生活保護費を決めるのは自民党?
平均6.5%が引き下げられた経緯

 2013年1月、厚労省は生活保護費の生活費分を平均6.5%引き下げる方針を発表した。2012年末の衆議院選挙で圧勝して与党となった自民党は、生活保護費の生活費分を10%引き下げることをアピールしていた。厚労省はそれに呼応し、しかし若干の緩和を行った形である。

 とはいえ、厚労省の資料のどこにも、「自民党が10%引き下げと言ったから引き下げました」という記述はない。もしかすると、「そんな事実、恥ずかしくて書けない」ということなのかもしれない。しかしそれ以上に、法をはじめとする数々の規範によって「決めるのは厚労省であって政権与党ではない」と定められている以上、厚労省は「決めたのは自民党です」とは言えないのだ。

 生活保護法第8条には、生活保護基準は「厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし」「(健康で文化的な)最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえない」ものであると定められている。

 この文言だけを読むと、「時の厚労大臣が、内容も基準も方法も勝手に決めてよい」という解釈もできる。しかし、この部分の意味は、「確実なデータを根拠として、貧困や生活や健康の専門家たちに科学的方法で検討してもらって、さらに厚労省の官僚たちが検討して、厚労大臣の責任において『これが今年の生活保護基準です』と示す」ということだ。