第1波が終息しつつある新型コロナウイルス。6月22日発売の「週刊ダイヤモンド」の特集「医者&医学部 最新序列」では、コロナ禍を経た医療現場の状況を詳報している。感染症専門医や公衆衛生の専門家が抱える課題や、日本の新型コロナ対策についての課題を、政府専門家会議委員の岡部信彦・川崎市健康安全研究所所長に聞いた。2回にわたってお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
緊急事態宣言は劇薬だった、副作用が作用を上回らない手当てが必要だ
――緊急事態宣言が解除され、第1波は乗り切りました。日本のどのような対策が奏功したのでしょうか。
社会全体がさまざまな不便を被りながらも、感染症の広がりが少なくなったのは緊急事態宣言が後押しした、といっていいでしょう。僕は当初、新型インフルエンザ等対策特別措置法や緊急事態宣言なしにやった方がいいんじゃないかという考えだったけれど、専門家会議は「日本は緊急事態宣言をしなければならない」という内容を了承しました。
イタリアやスペイン、米国などで医療崩壊が起き、病院がパンクしている現状が日に日に明らかになってきたことも背景にはありました。日本でもたとえ感染者数の増加が止まったところですぐにも患者の数が減るわけではない。病院が逼迫した状態だったことに変わりはなかった。入院患者を断らなきゃならないところが出てきていて、医療崩壊を防ぐためにも緊急事態宣言には賛成しました。その結果として、パンパンだった病院には空きができ、軽症の患者を移動させ、地域全体で負荷を分担したことで、病棟が空いた。「患者が重症になったり死に至ったりすることを防ぎたい」という願いは医療の原点です。その意味では「ミラクル」と言われようと、他の国に比べれば医学的にはうまくいった。
ただ、僕は緊急事態宣言は「劇薬」だったと考えています。飲めば効果は上がるだろうが、副作用も出る。副作用がもともとの病気を超えないように抑えないといけない。これは医学面だけではなく、社会全体に対してのことです。ロックダウンをしない世界的に見れば変わったやり方ではあったけれど、乗り切ったことは確かです。そして、その対策が経済的な問題も含めていろいろなところに多大な影響をもたらしたのも事実です。