IPPOの関口秀人社長によると、増えた案件の典型は「コミュニティーやカルチャーをつくる場所として最低限のスペースは欲しいので、今いるオフィスの半分や3分の1くらいにしたい」というものだ。
と同時に、コロナ危機前に契約したオフィスをキャンセルできないか、定期借家契約(定借)を中途解約できないかとの相談も多い。
人気大型ビルほど
定借契約に手足を縛られる
オフィスの契約には一般的な普通借家契約と、定借がある。普通借家契約であれば、3カ月前なり6カ月前なり、取り決めに従って事前に解約予告を出せば退去できる。だが、契約期間に定めがある定借は、貸主と借り主の合意がないと中途解約できないのが原則だ。
大型ビルなどは定借で貸す傾向にある。近年竣工したような人気の大型ビルに入居した会社ほど、この局面において契約に手足を縛られている。
縮小移転は、身軽で柔軟に動きやすい会社が先行する。だからスタートアップの多い渋谷、中でも道玄坂や宮益坂などの比較的小さなビルに普通借家契約で入った会社から解約ラッシュが始まった。
もっとも、解約ラッシュがオフィスの空室率として数値に表れてくるのはまだ先。解約予告期間が終わった頃に顕在化することになるからだ。縮小移転の波がさらに大きくなって、玉突きのように空いたオフィスを埋めることができなくなれば、空室率はさらに上がることになる。
早々に縮小移転を決めたゼノデータだが、「2年後のことは分からない」と関社長。再び立派なオフィスビルに移ることはあるのかもしれないが、「きれいなオフィスは必要でも、でかいオフィスは要らないかな。社員全員分を借りる必要はなくなってくるだろうから」。