確かに、反対を押し切って進めれば、1人最大2万円の支援金を目当てにした旅行者は瞬間風速的に増える。カラカラに干からびていた観光業も助かるだろう。が、そんな経済効果を帳消しにするほどの事態を招きかねない。

 旅行者が増えれば、間違いなくその地域の新規感染者は増えていく。そうなったとき、毎日ワイドショーの新規感染者マップを見て、一喜一憂しているような「ゼロリスク信仰」の人たちは、必ず勝ち誇ったようにこんなことを言い出すはずだ。

「ほらみろ、言わんこっちゃない。国民の安全よりも観光を優先させた報いだ」

 もしそこで、高齢者施設などに飛び火して集団感染でも起きたら、この「観光ヘイト」はさらにヒートアップするだろう。

 他県ナンバーの車や、スーツケースを引きずる人々を地域から追い出すため、あおり運転や嫌がらせをするような「観光自粛ポリス」が登場するかもしれない。あるいは、観光客を受け入れる観光業者に対して、営業自粛に従わなかったパチンコ屋や飲食店がやられたような脅迫などが行われるかもしれない。

観光の経済効果よりも
感染拡大が心配になる

 バカバカしいと思うかもしれないが、こうした状況はコロナ禍になってから日本中で報告されている。コロナ患者や医療従事者に向けられる差別、心ない誹謗中傷があれほどあったことを踏まえれば、かなり現実的なシナリオだ。

 つまり、今の社会情勢の中で強引にこのキャンペーンを進めてしまうと、そこで得られる経済効果より「観光客が感染を拡大する」というネガティブなコンセンサスを社会に定着させるという「副作用」の方が、はるかに大きくなってしまう恐れがあるのだ。

 そうなってしまったら、観光業へのダメージは計り知れない。日本人の多くが「旅先で嫌な思いをするくらいなら、遠出の観光旅行は控えようか」というマインドになって、国内観光客数も数年は伸び悩むかもしれない。