「人生を変えるのに、最も効果的なライフハックとは何だろう?」と、デイヴ・アスプリー氏はこれまで20年近くかけて、シリコンバレーの最新のラボからチベットの修道院まで、世界中のあらゆる場所に足を運んで、体当たりの自己実験で研究してきた。
さらに、脳科学、生理学、東洋哲学、心理学といった分野の専門家の他、アスリート、医師、ライフハックの達人まで、400人以上の研究者や成功者たちに、「最も重要な3つのことをあげてほしい」と取材を重ねてきた。
そんな探求の果てにつかんだ答えを「脳」「休息」「快楽」「睡眠」「運動」「食事」「幸福」「人間関係」等の分野に体系化、1冊の「究極のハック集」にまとめたのが『シリコンバレー式超ライフハック』(デイヴ・アスプリー著、栗原百代訳)だ。
著者自身、「20年前にこの本に載っていることを知っていたら、どんなに人生が違っていただろう」という衝撃的なハックが目白押しの本書から、一部を編集し紹介したい。(初出:2020年7月24日)
幸福は「友人の友人の友人」まで伝染する
だれと時間をともにするかが、あなたのパフォーマンスと幸福度を決める。モチベーションを高める講演者のジム・ローンが言うように、「最も長く一緒に過ごす5人」の平均が、あなたという人間だ。注意深くその人たちを選ぼう。
幸せは、文字どおり伝染することが判明している。約5000人を対象として行われた長期にわたる研究で、幸せな人びとはクラスターを形成することや、幸福は人間関係のネットワークにおいて3次の隔たり(たとえば友人の友人の友人)まで広がることがわかった。
これはただの偶然でもなければ、幸せな人は互いに惹かれ合うという自然な結果でもない。科学者たちは、幸せな人に囲まれている人は、本人も将来幸せになる可能性が高いという結論を出した。そして、この本を読んでいるあなたは、幸せな人は成功する可能性が高いことも知っている(参考記事「幸福な人は生産性が『31%』も高い」)。
このことは、人間関係と幸せのあいだにポジティブ・フィードバックループ〔一方が増えれば他方も増え、一方が減れば他方も減るという、同方向に影響が働く関係〕が存在することを意味している。幸せな人はもっと多くのもっと良質な関係を結んで、自身の幸せを他者へと広げ、他者をいっそう幸せにする。
「一貫してとても幸せな上位10%の人たち」「平均的な人たち」「不幸な人たち」を比べると、高い幸福度のグループは、あまり幸せでないグループより社交的であり、恋愛やその他の人間関係においても他者と強くつながっていた。
帰属できるコミュニティが存在することには、人を安心させ、原始的な脳が恐怖に対して示す反応を鎮める効果がある。
「似た考え」より「似た志」の人とつきあう
誤解しないでほしいが、自分と同じように考えて同じように行動する、気の合う人とだけ時間を過ごすべきだと言っているのではない。僕はライフコーチのJ・P・シアーズとの愉快で深い会話を心ゆくまで楽しんでいる。
J・Pは「似た考え」の人とつきあうのは好きではないと言う。それでは自分が成長できないからだ。それよりも「似た志」の人、考え方は全然違うけれども自分を受け入れてくれる人とつきあうことを好む。そう話していたとき、彼は奥さんのヒョウ柄のタイツをはいていた!
自分と同じ考えの人たちといるのは心地よい。同意してもらえるので安心だし、異論を唱えられることもない。だが、同意できない何かに直面するときにこそ成長の機会が訪れる。そんなとき、抵抗したり、関係を断ったりするのではなく、反対の立場から、あるいは異なる視点から相手やものごとを理解することをJ・Pは勧めている。
偉大な人生には、ただ生き長らえることではなく、真に生きるために死をも恐れない意志が必要だとJ・Pは考えている。その意志があれば、棺桶の中で「自動操縦モード」で毎日同じパターンを繰り返して生きているような安楽さを振り払うことができる。棺桶を打ち破って謎と未知の世界へ飛び出そう。あなたに異議を唱え、意外な方法や不快な方法であなたを成長させてくれる人たちとのつながりを求めよう。
まじめな話、J・Pのように人間的な深みがあって創造的刺激を与えてくれる(しかも面白い)人にいつも囲まれていたら、人生はどれほど磨かれることだろう。
その人はあなたを引き上げてくれるか、その反対か?
ともに時間を過ごす相手を選ぶことは大切だ。あなたが属するコミュニティの人びとは、最高のあなたを引き出してくれる人びとなのか、自分たちのレベルにあなたを引きずり降ろそうとする人びとなのかに注意しよう。
ものごとを良い方向に変えることをためらわず、新しいつながりをつかむことを恐れないようにしよう。あなたの周りにいる人は、あなたに限界を意識させる人だろうか、限界を超えるよう刺激してくれる人だろうか。
あなたの思考を揺さぶり、もっと大きく考え、いまと違う考え方をするよう迫ってくれる人たちを訪ね、その人たちと接する時間を増やそう。
(本原稿は『シリコンバレー式超ライフハック』〈デイヴ・アスプリー著、栗原百代訳〉から抜粋、編集したものです)
シリコンバレーのテクノロジー起業家、バイオハッカー
ブレットプルーフ360創業者兼CEO。シリコンバレー保健研究所会長。バイオハックの父と呼ばれる。ウォートン・スクールでMBAを取得後、シリコンバレーで成功するも肥満と体調不良に。その体験から、ITスキルを駆使して自らの体をバイオハック、世界トップクラスの脳科学者、生化学者、栄養士等の膨大な数の研究を総合し、自己実験に100万ドルを投じて心身の能力を向上させる方法を研究。自らもIQを上げ、50キロ痩せたその画期的なアプローチは、ニューヨーク・タイムズ、フォーブス、CNN、LAタイムズ等、数多くのメディアで話題に。ポッドキャスト「ブレットプルーフ・ラジオ」はウェブ界の最高権威、ウェビー賞を受賞するなど絶大な支持を誇る。著書に『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』『HEAD STRONGシリコンバレー式頭がよくなる全技術』(ともに栗原百代訳、ダイヤモンド社)など。
栗原百代(くりはら・ももよ)
翻訳家
1962年東京生まれ。早稲田大学第一文学部哲学科卒業。東京学芸大学教育学修士課程修了。訳書に『相性のよしあしはフェロモンが決める』(草思社)、『レイチェル・ゾー・LA・スタイル・AtoZ』(メディアパル)、『啓蒙思想2.0』『反逆の神話』『資本主義が嫌いな人のための経済学』(NTT出版)、『しまった!』(講談社)など。