「強み」を徹底的に伸ばす!

 一方で「谷」、つまり弱点や欠点についてはBizTalkに追いつこうとするのをやめ、必要最低限の水準でいいと割り切ることにした。

 BizTalkはすばらしい製品で支持を得たが、結果的に、DataSpiderを選んでくれるお客さまも多くいた。途中でいくつもの課題に直面はしたものの、全体で見ればアプレッソの事業は順調に推移していった。

「山」を伸ばすことで初期の危機を乗り切ったアプレッソはその後も製品改善を続け、その過程でたくさんの「谷」を埋めていった。

「谷」はとかく気になりやすい。なにせ「他より劣っている点」だからだ。だが「谷」を埋めようとすると、それだけでリソースを使い切ってしまい、メンバーの士気も低下する。

 もし仮に「谷」を全部埋めることができても、新しい体験や価値を世の中に提供できるわけではない。「谷」とは、「すでに他社製品が世に示した体験や価値」だからだ。ところが世の中には、「谷」を埋める仕事が極めて多い。

「山」を見出すことができなければ、仕事の大半は「谷」に吸い寄せられてしまう。仕事の99%は「谷」を埋める仕事となり、「山」を作る仕事は1%以下になるだろう。

 大切なのは、どんな状況下でも「谷」に惑わされず、自分たちの「山」が何なのかを見極めること。この「1%の本質」に焦点を当てることが、世の中に新しい喜びや驚きを届ける唯一の道だ。