世界のなかで、貿易収支や経常収支における黒字国や赤字国が出ることが問題というのではない。特定の国の経常収支の黒字幅や赤字幅が非常に大きくなることも、それほど問題ではない。問題なのは、先進国であり高齢化が始まる米国のような国が大幅な経常収支の赤字を出し、発展途上にあり今後も成長を続けていくことが予想される中国のような国が大幅な黒字を出していることだ。

 一般論で言えば、中国のような発展途上国が急速に成長するときには、貿易収支や経常収支は赤字傾向になるものだ。成長によって将来はより高い所得が得られることを期待して、世界の貯蓄が集まってくるからである。また、国内では生産の伸びよりも投資などの伸びが高くなることで、成長を引っ張ることが期待されるからだ。かつての日本も含めて、急速に成長する国は貿易収支の赤字を経験した。それを先進国の余剰資金がファイナンスするのだ。

 中国はそうではなかった。すでに前回前々回で述べたように、これは中国経済の特異性であった。あまりに輸出に偏った産業構造をもち、輸出偏重の成長戦略をとってきた中国経済の抱えるゆがみであった。

 皮肉なことに、太平洋の反対側にある米国経済が、これまた先進国では考えにくいような膨大な経常収支の赤字を出していることが、中国のこのアンバランスを相殺してしまった。米国は大量の借金をしながら経済を拡大させていたのだ。

縮小する米国の需要

 リーマンショックは、こうしたグローバル・インバランスの流れを大きく変える結果になった。不動産価格や株価が暴落した米国経済では、急速な需要の縮小が始まった。米国の需要の縮小は、米国経済の景気に影響を及ぼすだけでなく、世界全体の景気を冷やすものでもあった。

 日本の受けた影響がその典型であった。米国のような形での金融危機も資産価格の暴落も起きていないにもかかわらず、リーマンショック後の経済成長率の低下では、日本が先進国で最悪の状況だったのだ。