ギリシャ国債(10年債)の利回りは、2012年の初めに35%という異常な水準に達した。しかし、急騰したのは比較的最近のことである。09年までは、4~5%の水準だったのだ。
スペイン国債(10年債)の利回りも、10年までは4~5%の水準だった。10年の11月頃になって上昇を始めたのである。イタリアも似たような事情だ。
なぜ最近になってこうした変化が生じたのだろうか? ファンダメンタルズ(経済の実態)に何か大きな問題が起きたために、こうしたことになったのだろうか?
以下では、そうではなく、「市場のムードの変化によって利回りが変化した」、つまり、「ヨーロッパ金融危機はバブルの発生と崩壊だ」と論じる。
「ギリシャ問題」は存在していたのに、
国債利回りは高騰しなかった
ユーロ問題の始まりは、ギリシャ政権交代による国家財政粉飾決算の暴露だった。2009年10月、ギリシャでパパンドレウ新政権への交代が起こり、それまで対GDP比3.7%とされた財政赤字が、実際には12.5%であると発表された。これは、国債規模を「粉飾」したもので、それにはゴールドマン・サックスとのデリバティブ取引が関係していたと言われる。
12月には、スタンダード&プアーズ(S&P)は、ギリシャの長期格付けを引き下げた。
ところで、重要なのは、この暴露事件の前までに起きていたことである。
図表1に示すように、ギリシャ国債(10年債)の利回りは、4~5%台だったのである。これは、後に述べるドイツやアメリカ国債との比較で、「正常」な利回りと評価し得るものだ。リーマンショックの影響すら受けていない。
また、リスクの大きさを示すCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のスプレッドも、高い水準ではない(http://www.bloomberg.com/quote/CGGB1U5:IND/chart)。要するに、市場は「ギリシャ国債が危険だ」というシグナルを発していなかったのである。
ギリシャの隠ぺいが続いていたとしたら、いまに至るまでユーロ危機は発生していなかったのかもしれない。