それは、危機に瀕した際の経営者のビジョンとメッセージ、行動です。どのように現状を捉え、どのような手を打って苦境を乗り越え未来を切り開いていくのか。そのビジョンやメッセージを出しているかどうか、出しているとしたら、それに自分が乗れるかどうかを考えるのです。

コロナは企業の将来性を
スクリーニングする機会になる

 たとえば、星野リゾートの星野佳路代表はコロナに対するワクチンや治療法が確立されるまでおよそ1年半かかると想定して、必要以上に悲観的にならないためにも1年半後を見越した計画を立てることが重要とし、非常時の経営計画を立案しました。

 安全な旅を提供するため3密回避と衛生管理を徹底し、取り組み内容の広報に努めるとともに、需要の回復プロセスを、自宅の周辺地域を旅行する「マイクロツーリズム」、新幹線や飛行機を使った大都市圏からの旅行、そしてインバウンドと3段階に整理し、現在はマイクロツーリズムに注力しているようです。

 トップがこのように明確なビジョンを自ら語り、施策を打ち出していくと、しばらく苦境は続いても頑張ってみようという気にさせられます。その姿をメディアで見かけただけの、星野リゾートの従業員ではない私まで「頑張ろう」と思ったくらいです。

 また、居酒屋の塚田農場を展開するエー・ピーカンパニーは4月から店舗が臨時休業に入り従業員が出勤できなくなった際、異業種などで従業員が働く他社就労の取り組みを行いました。通常の給与の6割を自社が負担し、残りは他社で稼いでもらい、営業再開後はもとの職場に戻ることが前提の仕組みでした。

 これにより雇用維持の意思を強く示したことに加え、異業種での就労から新たな気付きや自分たちがやってきたことに対する自信を得る効果があったようです。

 こうした経営陣が発するメッセージや打ち手をしっかり見て、自分はそれに心を動かされるかどうか。しばらくは大変かもしれないが、一緒に頑張ってみようと思えるかどうかは非常に重要な視点です。

 危機的な状況に陥ったとき、その人の本質や本音があらわになるといわれます。コロナによる経営環境の急変は、まさに経営者の本質や本音が明らかにされる場面であり、会社の将来性はこうした状況で経営者が発するメッセージや打ち手に表れます。働く側としては、そこをしっかり見極めることが大切です。

 その意味では、コロナは自社の将来性をスクリーニングする機会であると捉えることもできます。