7月5日投開票の東京都知事選に再選出馬を表明した小池百合子氏。その半生に迫った『女帝 小池百合子』(文藝春秋)が5月28日に発売され、15万部のベストセラーとなった(6月11日現在)。「これまでの女性たちの苦難の道の末に咲かせた花であるとして、受けとり、喜ぶことが、できない」――。小池氏についてこのように書いた、著者であるノンフィクション作家の石井妙子氏に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
政治家を“演じている”小池氏に当初は興味なし
カイロ時代の生真面目な同居人が抱えていた秘密
――小池百合子氏についてこうした著書を書こうと考えたきっかけを教えてください。
最初は小池氏にはさほど関心がありませんでした。文藝春秋の編集者の方から執筆依頼があったのですが、小池氏は特に実現しようとしている政策もなく、いわば“空っぽ”。政治家というよりも、政治家を演じている人物だと考えていたので、本にはならないのではないかと思っていました。
小池氏が初当選した2016年の都知事選でも、彼女は情熱的な言葉を使って聴衆をあおっている割には、目が笑っていない。言葉と感情が比例しないというか、どこかひんやりしたものを感じ、それが気になりました。それでも、彼女について積極的に書きたいとは思いませんでした。
ただ、彼女がキャスターから政治家に転じ、東京都知事に上り詰めた平成という30年間を、小池氏という人物を通じて描けるのではないか。小池氏という政治家をここまで押し上げたのは、小池氏自身の罪なのか、この時代の私たちの罪なのか? そういう視点でなら本にできるという感じはしていました。
――月刊誌に小池氏の生い立ちを記す中で、エジプト・カイロ時代に小池氏と同居していた早川玲子(仮名)さんという女性から連絡を受け、彼女が保管していた膨大な記録や証言を取材することができたのですね。
早川さんはとても生真面目で優しい方です。小池氏よりも10歳ほど年上で、カイロに来た当時、20歳ほどだった小池氏にとっては姉のような存在でした。小池氏は1976年10月に当時のサダト・エジプト大統領夫人の訪日に同行し、日本に一時帰国した際、日本のメディアの取材を受けて、「日本人で2人目、女性では初めてカイロ大学を卒業した」と自己紹介しました。
小池氏は、エジプトに戻ってからそのように書かれた日本の新聞記事を早川さんにうれしそうに見せています。早川さんは当時を振り返り、「そんな嘘をついてはいけないと、小池氏にもっと注意を与えておけばよかった」と後悔の念を私に語ってくれました。