レインボーブリッジを真っ赤にライトアップした「東京アラート」が廃止されて以降、東京都の新型コロナウイルスの新規感染者数は増加傾向で、7月2日以降、2カ月ぶりに100人を超えた。何のためのアラートだったのかとツッコミたくもなるが、実は東京アラートの発令の基準は極めてあいまいだった。太陽の塔などをライトアップした「大阪モデル」のマネだったと指摘されても仕方あるまい。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
真っ赤なレインボーブリッジに人だかり
新たな基準は分かりにくいと不評
真っ赤に染まった東京都庁とレインボーブリッジ――。
新型コロナウイルスへの警戒を呼び掛けるために東京都が5月に発表した「東京アラート」。むしろ、赤く染まったレインボーブリッジを一目見ようと人だかりができるという“副作用”が発生した。
実は、東京アラートを発する明確な基準はなく、よく分からないまま廃止されてしまった。代わりに都は、「専門家による医療提供体制の分析も含めた評価をする」(小池百合子知事)として、6月30日にコロナの感染拡大状況の新しいモニタリング基準を公表した。
モニタリング項目として、(1)新規陽性者数、(2)#7119(東京消防庁救急相談センター)への発熱などの相談件数、(3)新規陽性者数のうち接触歴が分からない人数と増加比、(4)検査の陽性率、(5)救急医療の東京ルール(20分以内に救急患者の受け入れ病院が決まらないなどの状況)の適用件数、(6)入院患者数、(7)重症患者数――の7つを設定した。
ここに医師ら専門家が、状況を総括したコメントを記したものを数値とともに日々、試行期間を経て公表するのだという。
都内の感染者数は毎日夕方ごろ、「都の関係者によると」とのソースでテレビのニュースで伝えられる。その数は6月中旬以降、40~60人と増加傾向で、7月2日以降は2カ月ぶりに100人を超えた。ただしこの人数の増加は、新宿・歌舞伎町や池袋のいわゆる「夜の街」での感染者とその接触者を集中的に検査しているためであるとし、いわゆる「第2波」のような大規模な感染拡大が始まっているとの認識を都や政府は否定している。
6月30日夜に緊急記者会見を開いて新たなモニタリング基準を発表した小池知事は、説明の途中で「検査 医療 体制拡充」と書かれた緑色のパネルを掲げて見せた。
ところが、国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長や東京都医師会の猪口正孝副会長ら専門家が同席したにもかかわらず、わずか6人の記者の質問に答えただけで、会見は約40分で終了。小池知事は早々に会場を後にした。
その後は都総務局、福祉保健局の職員がレクチャーを開催して説明に追われたが、記者からは「基準が複雑で分かりにくい」との指摘が続出。「なぜ都民に浸透していない東京消防庁の相談ダイヤルの件数を使うのか、試行期間中に見直してはどうか」と半ば“注文”に近い質問さえ出た。
ちなみに新規感染者100人超の速報が流れ全国に衝撃が走った7月2日も小池知事は夕方に緊急会見を開き、大曲、猪口両氏が同席したが、やはり6月30日と同様に40分前後で会見は打ち切られた。
注意喚起を分かりやすく都民に伝えることは重要だが、複雑な事象を正確に伝えることと矛盾しがちで、そのバランスは確かに難しい。
そこで、都庁とレインボーブリッジを真っ赤に染め上げる「東京アラート」の一連の経緯を検証していこう。