――コロナ禍において、企業が欲しがる「エグゼクティブ人材」とは、具体的にどんなことができる人材か?
先ほども申し上げたように、今の危機的な状況下で、資金繰りや人事の問題などを解決してくれる管理部門を担う幹部層へのニーズは高まっている。
その際に求められるのは、「言われたことをただやるマネジャー」ではない。決められたオペレーションを回せる人は多いが、それしかできない人は求められていない。たとえ大企業出身だとしても、だ。
企業はコロナ禍での経理業務や人事制度の見直しなど、課題を発見して、改革や改善ができる人材が喉から手が出るほど欲しい。ただし、ここで注意しなければならないのが、一生懸命ペーパーを書いていた人、要するに企画書を書いていただけの人は求められていないことだ。
もちろん企画書は書けなければならないが、「そのサービスは立ち上がったのですか?」「どれくらいのビジネスになったのですか」と転職候補者に尋ねると、モゴモゴして答えられなかったり、「承認が得られませんでした」と言ったりする人が実は多い。
極論すれば、今はペーパーなんていらないので、どんどん動いてテコ入れができる人、事業を立ち上げた経験や商品のカスタマイズや売り先を変えて大きな成果をもたらした実績がある人が求められている。頭は良さそうで、企画書は素晴らしいけれど、実際に何もやっていない人では意味がない。
「大企業1社だけ」の人材より
修羅場をくぐり抜けた「転職経験者」
――現在の社会変化を受けて、これからどういったエグゼクティブ人材は転職市場で求められなくなり、どういう人材であれば引き続き求められるか?
一般論にはなるが、年齢が上にいくほど、大手企業1社しか経験のない人は正直、求められなくなってくるだろう。その方が悪いわけではないし、いい会社で偉くなったのは素晴らしいが、タフな外部環境に適応したことがないので、こういう激変する環境下で大ナタを振るうのは難しい。本人が「できます」と言っても、話をすると今まで恵まれていたのだなと痛感する方が多い。
一方で、求められるのは、幹部層では転職未経験者よりも1回や2回くらい転職を経験している人だ。例えば、まず大手でしっかり成果を出した後に30代で転職をし、別の会社で責任を持って働いて今に至る人。そういう人は、企業からも魅力的に映る。
転職の理由として「今の会社が過酷だから」という人が少なくないが、そんな会社でちゃんと頑張って成果を上げた方は、その後バリューがある。修羅場経験とよく言われるが、前向きにいえば、そうした経験がないよりある人のほうが仕事力も上がっていて、長い目で見れば、評価は高まっていることが多い。