教養があるかないか二極化が進む(写真はイメージです) Photo:PIXTA

今、教育の現場では、あらゆる学習において、社会に出てからの実用性を重視する実学志向が強まっている。だが、基礎知識や教養、物事を深く考える習慣を身につけさせないのであれば、先の読めない変化の激しい時代を柔軟に生きることは困難だ。『教育現場は困ってる――薄っぺらな大人をつくる実学志向』(平凡社新書)の著者・榎本博明氏は、学校教育の在り方に警鐘を鳴らす。今回はシリーズ5回目で、「実学重視に走る教育の危うさ」について問題提起する。

小説・評論から実用文にシフトする国語教育

 学校の勉強は社会に出てから何の役にも立たない、もっと役に立つ内容を教えるべきだ。そんな声が強まり、学校教育が実用性を重視する方向にどこまでも進んでいくことに対して、榎本氏は教育の危機を感じるとしている。

 このような教育改革の動きに対して、2019年1月、榎本氏も加盟している日本文藝家協会により、「高校・大学接続『国語』改革についての声明」が出された。これは、2022年度から施行される新学習指導要領による国語科の大幅な改定に対する危機感の表明である。

 簡単に説明すると、「大学入試および高等学校指導要領の『国語』改革」において、高校で文学の勉強をせずに、もっぱら実用文に重きを置いた教育をすることになったのである。

 日本文藝家協会の出久根達郎理事長は、「文科省は本気でそのような教科書を作るようなので、今のうちに大きな反対ののろしをあげなければいけない。駐車場の契約書などの実用文が正しく読める教育が必要で文学は無駄であるという考えのようだ」と懸念を示している。さらに「まだマスコミでも大きくは取り上げておらず、一般には周知されていないと思われるが、文部科学省の方針に大反対をしていこうと考えている」(文藝家協会ニュース2019年1月号)としている。

 この声明が出されてからすでに1年以上が経過したが、このような文科省主導の教育改革の動きについては、いまだにメディアでほとんど取り上げられることがなく、多くの国民は何も知らないのではないだろうか。