設計図がコピーされても
お金がきちんと落ちる仕組み

 ファーウェイは、中国を代表する技術企業として、多数の特許を保有している。国際特許出願数では2014年、2015年、そして2017年から2019年で1位を記録している。日本では特にスマートフォンが有名だ。格安のSIMフリー携帯から人気となったが、10万円前後のフラッグシップ機でも、アイフォーンを上回るレベルのカメラ性能があるとして根強いファンを獲得している。まさにモダン層の代表格に見える。

 実際、ファーウェイは特許を行使して自らの知的財産を守っている。前述した「アフリカの王」伝音控股は2019年夏に上場したが、その直前にファーウェイから特許侵害で告訴された。スマートフォンを含む通信機器は特許技術の宝庫だ。各社は大量の特許を取得しているが、それは主に訴訟に備えるためである。相手になんらかの訴訟を起こされた時、手持ちの特許を使って反撃する用意が必要なわけだ。アップルとサムスンが2011年から七年間にわたり特許合戦をくり広げたことは有名だし、グーグルがモトローラの携帯電話部門を買収(のちに売却)したのも特許取得が目的だったとされている。

 ファーウェイはもちろん、シャオミ、OPPO、VIVOといった中国メーカーも大量の特許を保有し戦いに備えているのだが、途上国市場を主力とする伝音控股は、特許戦の準備はしていなかったようだ。

 では、ファーウェイがモダン層としての振る舞いしかしていないかというと、そうではない。 深センには方案公司(ソリューションハウス)、IDH(インディビジュアル・デザイン・ハウス)と呼ばれる企業群がある。彼らはエレクトロニクス製品の中核部品である基板の設計、製造を仕事としている。

 さて、知的財産が保証されない世界で設計という仕事は成り立つのだろうか。設計図などもっとも簡単にコピーできてしまう代物ではないか。こうしたアイデアを仕事として成り立たせるために、知財保護の仕組みは考案されてきたはずではないか。

 ところが、深センでは設計図はいくらコピーされたとしても、それで方案公司にお金が落ちる仕組みが整えられている。方案公司は基板を設計、製造するとともに、その基板に適合する部品のリスト、BOM(部品表)を作成する。深センには無数の部品サプライヤーが存在するが、それらのサプライヤーのどの部品ならば相性よく使えるのか、どの部品は適合しないのかを確かめるには大変なコストがかかる。結局のところ、方案公司のBOMに従うのがもっとも賢明なやり方となる。