筆者らの新著『プロトタイプシティ――深センから世界的イノベーション』が、7月31日に刊行された。
発行:KADOKAWA

 つまり、ファーウェイは時と場合に応じて、モダン層、プレモダン層、ポストモダン層という態度を使い分けている。その判断基準は何が自社の利益にとって最善か、だろう。

 一部ではこのような指摘もある。中国企業が知的財産を無視するのは持たざる者だからだ、と。発展途上の段階で先進国同様の知的財産ルールを守ってしまえば、成長の道が閉ざされかねない。発展途上の段階では知財を無視してコピー品を作りまくり、成長して十分な開発能力を備えた後に先進国的なルールを備えていく。かつての日本も韓国もそうであった。中国もたんなる過渡期に過ぎない。

 この指摘の正否を現時点で断じることは難しい。10年後、20年後に改めて検証されるべきテーゼだろう。だが、今現在の観察からはかつての日本、韓国とは異なる事象が起きているのではないかと思わされる。

 その理由こそが、本書のテーマであるプロトタイプシティの時代ということになるだろう。非連続的価値創造が求められる時代において、ともかく手を動かし、超高速の模索(もさく)が求められる時代。限界費用ゼロでのコピーが可能なデジタルの世界という技術的背景、時代環境において、これまでとは異なる状況が生じているのではないか。

 だからこそ、世界的な大企業になった今でも、ファーウェイはプレモダン層的な手法とポストモダン的な手法も捨てていないのではないか。

(高口康太)