ブラック企業から倍率100倍のホワイト企業への転職を成功させた男――として、日増しに支持層を広げているサラリーマンYouTuberのサラタメさん。体験を生かした転職ガイドも去ることながら、その魅力はなんといっても動画で視聴できるビジネス書ガイドにある。
オリエンタルラジオの中田敦彦さんやマコなり社長さんといった著名YouTuberも「今見るべきYouTuber」と推薦。今年2月の時点で約25万人だったチャンネル登録者数が、現在約45万人(2020年8月時点)と急増している。
マーケティング関連の仕事に従事しながら書籍紹介の動画を配信し続けるサラタメさんは、取り上げるべき1冊に出合うため、日々読書と隣り合わせの生活を送っているという。そこでここでは、大量のビジネス書を効率的に読み解く、独特のノウハウにアプローチした。(文/友清 哲)
「全部読まなくてもいい」という割り切りが大切
――これまで『7つの習慣』のようなビジネス書の定番的タイトルから、『嫌われる勇気』、『サピエンス全史』といった書籍に至るまで、様々な作品を紹介してきました。タイトルのセレクト基準は?
サラリーマンのあなたの、タメになりそうなことをしゃべるYouTubeチャンネル。オススメ書籍やニュースの解説など、ビジネスマンの方に役立つ知識を、聞くだけで理解できる音声コンテンツにして投稿している。現在の登録者数は約45万人。ブログ:サラタメのホワイト転職
広義のビジネス書というよりも、サラリーマンの方が読んで面白いもの、と括ったほうが正確かもしれません。根底にあるのは、私自身が読んで面白かったものをご紹介する、というシンプルなコンセプトです。そのため、最近はありがたいことに各出版社さんから献本のオファーをいただくようになりましたが、基本的にはすべてお断りして、一切のしがらみを排除して自分で選ぶようにしています。
――毎日どのくらいのペースで本を読んでいるのでしょうか。
こうしてYouTubeを始める前は、純粋に自分の興味で乱読していたので、週に10冊を超えることも珍しくありませんでした。しかし今は、動画で取り上げることを前提にしていますので、どうしても当たり外れがあり、週によってもバラつきがあります。何の気なしに手にした本が抜群に面白くてそのまま動画で紹介することもあれば、取り上げるに足る1冊を見つけるために、4~5冊読まなければならないこともありますね。
ただ、そのために毎日大量の読書に追われているかというとそうでもなく、ここ最近は転職ガイドの動画と交互に配信しているので、書籍を紹介しているのは隔週ペースです。よく聞かれるのですが、特別な速読法をマスターしているわけではないので、本を読むスピードはむしろ遅いほうだと思います。
――遅いのですか? では、要点の掴み方や主題の読み解き方などに、何らかのコツがあるのでしょうね。
私の場合、最初に徹底して目次を読み込むようにしています。「全部読まなくてもいい」と割り切ってしまうことが重要で、目次の中から気になるパートに赤ペンなどでチェックを入れていき、そこを重点的に追っていくんです。結果的に、前後の内容まで含めて1冊すべて通読するケースもあれば、チェックしたパートだけを読めば要点が掴めてしまう本もあります。
その分、見切ってしまうのも早い。目次に並ぶ見出しが今ひとつで、いくつかのパートを読んで内容にもあまり惹かれなければ、全体の10分の1ほどしか消化していなくても、読むのを辞めてしまうこともありますから。
――チェックを入れるということは、電子書籍よりも紙の書籍で読むのでしょうか?
そうですね。昔から電子書籍より紙のほうが好きでしたが、こうして動画を配信するようになってからは、いっそう紙での読書量が増えました。目次にチェックを入れる作業もそうですが、何より解説の骨子を固める過程で、本全体を行ったり来たりしながら内容を噛み砕いていく作業は、やはり紙のほうがやりやすいです。そのため、電子書籍で読んだ作品を、解説シナリオを作るためにもう一度紙で買い直すようなこともあります。
悩みに対する解決策を「目次」から見つけ出す
――読書に求めるものは、人それぞれ異なると思います。サラタメさんの場合、重視していることは何でしょうか。
そもそもビジネス書を手にする場合というのは、何かしらの悩みがあり、それを解決したいという前提があると私は思っています。つまり、読書をしながら著者の方が伝えたい主題を見つけようとしているのではなく、自分自身が「最近うまくいってないなあ」と感じている悩みを解決してくれることを期待しています。
――YouTube配信を前提としている現在、その悩みの主は自身だけでなく、視聴者も含まれることになります。視聴者のニーズはどのようにリサーチしていますか?
動画のコメント欄を入念にチェックするようにしていますね。「この部分の意味がわかりませんでした」とか「ここをもう少し重点的に説明してほしかったです」といったコメントは常に反省材料で、次の動画を作る際の参考にしています。
もしかすると著者の方にとっては意図と異なる部分を切り取って紹介しているケースもあるかもしれません。それでも、1人の読者としてのリアルな悩みをベースにしているのは事実で、1つのパートを抜き出して読んでみて、面白かったらそれを補足してくれそうなパートを探してさらに読み込む、ということを繰り返しています。