投資家は欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と仏同業PSAの合併にあまり期待を寄せていないようだ。だが、その潜在的価値とFCAに有利な財務条件は、合併手続きが最終段階に近づくにつれ無視できないものになるだろう。自動車業界に合併が必要なことにほとんど疑いの余地はない。特に欧州では、トップ3メーカーの今年上期の市場シェアは53%にとどまっており、規制当局は利益率の低い電気自動車(EV)を推進している。新型コロナウイルスの流行が起きる前でさえ、自動車業界は巨額の投入資本に見合う利益を上げられていなかった。プジョー・シトロエン、オペル、ボクスホールなどのブランドを持つPSAとFCAが合併すれば、少なくとも37億ユーロ(約4660億円)のコスト節減効果が見込める。これらの「シナジー効果」は約150億ユーロの正味現在価値を持つ可能性があり、両社の株式価値の合計(合併完了前に株主に支払われる配当を除く)に70%以上が上乗せされることになる。だが、両社の株価にはそういった可能性の気配が少しもなく、両社の株価はウォール・ストリート・ジャーナルが初めてこの合併協議について報じて以降、業界全体の動向に沿って下落、PSAの株価は業界水準以上の落ち込みとなっている。