今、シリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」が爆発的に広がっていることをご存じだろうか? 「ストイシズム」(ストア哲学)とは、2000年以上前に古代ギリシャで生まれた、「目的」と「意志」を備えた人生を送るための哲学である。ストイシズムの研究者であるブリタニー・ポラット氏は、ストア哲学者たちの言葉をもとに、90日にわたってストイシズムを学び、自らの考えや決断を探究できる書、『STOIC 人生の教科書ストイシズム』を上梓した。本記事では、本書をもとに「自分の目指す人生を送るためにすべきこと」について紹介する。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)
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理想と現実の間にある“先延ばし”
誰しも「こんな人生を送りたい」と心に抱いているものがあるだろう。
だが、その理想と現実の間には、いつも“先延ばし”という壁が立ちはだかる。
例えば、「いつまでもスリムで機能的に動く体でいたい」とか、「英語を学んで海外の人たちとコミュニケーションを取れるようになりたい」といったことだ。
実は、これらは筆者が長年ぼんやりと考えてきたことだ。
しかし、まったく実現していない。年々体重は増え続けるし、英語の勉強もほとんどしていない。
目の前の仕事や目先の楽しみを優先してしまって、自分が理想とする生活を送れていないのだから当然だ。
やせようと思うなら、早起きしてランニングや筋トレをすればいい。
しかし、毎晩「明日こそ早く起きよう」と思いつつも、スマホ片手に夜ふかしをしてしまい、いつもと変わらない時間に起きてしまう。「やらなきゃ」と思いながら、行動を先延ばしにしているのだ。
とはいえ、「何もしなければ何も変わらない」ということは頭のどこかでわかってもいるのだが。
人生を一番無駄にするのは“先延ばし癖”
ストア哲学者の一人であるセネカは、次のような言葉を残している。
先延ばしは、一日がくるごとに人から一日を取り上げ、後からするという約束を盾に、いまを奪い去る。
生きていくことの最大の障害となるのが、明日を頼りにして今日を無駄にする期待だ。
……あなたは何を目指しているのか?
これからやってくることはすべてが不確実だ。
ただちに生きよ!
――セネカ『人生の短さについて』(第9章1)(P.106)
ブリタニー・ポラット氏は、このセネカの言葉を次のように説明する。
なんとも耳が痛い話だ。
しかし、この言葉は年を重ねれば重ねるだけ重くのしかかる。
英語の勉強も体作りも、若いうちに取り組んでいた方がずっと成果は出やすく、その後の積み重ねにより大きなものになっていく。
だからこそ、年を重ねてから取り組もうと思っても、「この年からでもできるのだろうか」と気が重くなり、つい「もういいか」と諦めてしまう。
理想の一日を書き出し、“今”を変える
ポラット氏は、私たちがそんなふうに諦めてしまわないために、次のような問いかけをしている。
瞬間、瞬間を満喫する一日……つまり、「理想の人生」だ。
そんな人生を送るためにすべきことを書き出し、その際の気持ちを具体的に想像することを、ポラット氏は提案している。
目標を書き出すといえば、大谷翔平選手が高校時代に「ドラフト1位 8球団」という目標を達成するためにすべきことを書き出した「曼荼羅チャート」が有名だ。
大谷選手は、おそらく書き出したことを先延ばしにせずに一つひとつクリアしたり毎日積み重ねたりした結果、現在の自分を手に入れたのだろう。
彼はまさしく「ストイシズム」を実行して、「目的」と「意志」を備えた人生を歩んでいると言える。
今から大谷選手のような人生を送るのは難しいかもしれないが、スマホをだらだら眺める時間を減らせば、筆者も数年後には海外を一人旅できるくらいには成長しているかもしれない。
人生の終わりを「やりたいことは全部やった!」と笑顔で迎えるためにも、ストイシズムの教えを参考にしながら、今すべきことを改めて考えてみたいと思う。
そうすることで、今日という一日が、理想の人生の“最初の一歩”になるはずだから。









