人は後悔するのが当たり前

ゲイ作家が教える 愛する人との別れの受け入れ方精神科医Tomy
1978年生まれ。某名門中高一貫校を経て、某国立大学医学部卒業後、医師免許取得。研修医修了後、精神科医局に入局。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、産業医。精神科病院勤務を経て、現在はクリニックに常勤医として勤務。2019年6月から本格的に投稿を開始したTwitter『ゲイの精神科医Tomyのつ・ぶ・や・き』が話題を呼び、フォロワー数が急増。覆面で雑誌、テレビ・ラジオ番組にも出演。舌鋒鋭いオネエキャラで斬り捨てる人は斬り、悩める子羊は救うべく活動を続けている。前著『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)は発売即、大反響となりベストセラーに。最新刊は『精神科医Tomyが教える 1秒で悩みが吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)

もちぎ:愛する人との死別って、きっと後悔することが多いんでしょうね。死別した瞬間、すべての行為が「もうできない」に変わるわけですから。たとえば、「親孝行しない」が「親孝行できない」に変わって、それをメチャクチャ後悔するのかな、と。そういう後悔の念を持つ人には、どう回答するんですか?

精神科医Tomy:人がなぜ後悔するかというと、「防衛機制」という心の働きがあるからです。簡単に言うと、起きたことをそのまま受け止めると心が不安定になるので、後悔することによって何かしてあげたような気分になり、心のバランスを保とうとするわけです。

つまり、人は後悔するのが当たり前なんです。だから「後悔しない方法を教えてください」と言われても、それはできないし、別にする必要もないです。精神科の療法で「森田療法」というのがあるんですけど……。

もちぎ:聞いたこと、あります。

精神科医Tomy:簡単に言うと、「あるがままを認めましょう」「心の中に起きたことをそのまま観察して認めましょう」という治療法です。これってすごく大事なことだとなんです。

死別においても、自分の心に起きたことを、修飾したり無理やり加工したりするんじゃなく、そのまま置いておけばいい。それをなんとか抑えようと思うと、逆に暴走してしまうことがあるんです。あとは、自分の思いを書き出すことも大事ですね。

もちぎ:「書き出す」という方法は、Tomy先生の本で読みました。

精神科医Tomy:まず、書き出して吐き出す。それによって、誰かに聞いてもらったような気分になれるし、「なんかヘンなことを考えていたな」みたいに気づくこともある。結果的に、自分で自分の考えを修正できることがあるんです。

もちぎ:死んだ人のことを思う時間も必要ですけど、残された人は、生きているから仕事もしないといけないし、家のこともしないといけない。「時間に余裕があると不安になりやすい」という話もありますけど、長々と考える時間を持つより、何か物事に取り組むことも大事かな、と思います。

暇すぎるのも、忙しすぎるのもよくない

精神科医Tomy:確かに、そうなんです。うつ病って普通は忙しくて頭を使いすぎてなるものなんです。けれど、定年退職後にやることがなくなって、うつ病になる男性がけっこう多いんですよね。やっぱり暇がありすぎるというのも、ちょっと考えものなんです。

ただ、ボク自身の経験で失敗したのは、ジョセフィーヌと死別した後、仕事を詰め込みすぎて空いた時間を作らないようにしたこと。最初はよかったんですけど、1年後くらいに反動がきて、うつ病っぽくなっちゃったんです。だから、暇すぎを避けるためにやることを作ることも大事だけど、ブレーキを踏むことも大事なんです。

もちぎ:あー、そうですね。

精神科医Tomy:仏教の禅では、1つひとつの動作を丁寧にやることで心を穏やかにするという考え方をよく使うそうです。たとえば「きれいに掃除する」とか「料理を作って食べる」といった動作に意識を集中することによって、心が余計なことを考えないようにする。つまり、何かに集中して取り組むことは大事だけど、作業量は増やしすぎないほうがいいですね。

もちぎ:確かに、何かに取り組むことによって、心を落ち着いた状態にしてから死別した人のことを振り返ったほうが、建設的になれそう。

精神科医Tomy:場合によっては、あえて悲嘆にくれる時間をつくるのもアリです。ある程度元気なときに、あえて思い出の場所に行って、ワッーと泣いている。言い方は悪いですけど、「悲劇のヒロイン」になったつもりで、悲しんでスッキリして帰ってくるというのも1つの方法です。

ボク自身、何度もジョセフィーヌとの思い出の場所に行ったんですけど、何度も行っていると、やっぱり心が慣れてくるんですよね。結果的に、それほど行きたいと思わなくなるし、ちょっと落ち着きを取り戻せたんです。