店側を痛烈に批判して責任転嫁する小池知事
対策をしていたと報じられ今度は客を批判

 ステッカーを正面玄関に掲示しているにもかかわらず、感染予防の取り組みが不十分だと前回の記事で指摘した伊勢丹新宿本店では、小池知事がTシャツを披露したまさにその日、伊勢丹を象徴する緑地にチェック柄などの模様が入ったエコバックの即売会を本館地下1階の食料品売り場で開催。客が殺到し、一時は特設カウンターが「三密」状態になっていた(下写真)。

小池知事、都の「感染防止ステッカー」掲示店でクラスター発生でもパフォーマンスに終始写真:読者提供

 ステッカーの実効性が問われたのは、8月12日に露呈した、東京・江戸川区のフィリピンパブでのクラスターの発生だった。この店ではステッカーを掲示していたにもかかわらず、客と従業員計8人が感染した。

「中には(感染予防対策を)実践もせずに、ただ貼ってつけておけばいいや、みたいな事業者がいないとは限らない。そして現実に、今回起こったわけです」――。翌13日朝、都庁入庁時のぶら下がり会見で小池知事はこう言い放ち、フィリピンパブを痛烈に批判した。

 ところが同日、店側は十分な対策を取っていたが、従業員に対してフェイスシールドを外すよう求める客がいたなどとする江戸川区の見解が報じられた。すると、小池知事は発言を翻す。午後の会見では、朝の発言などなかったかのように「利用客には、大声で話して飛沫が飛ばないようにするなどの認識も必要だ」などと、一転して今度は利用者側を批判した。

 そもそもコロナウイルスは飛沫感染が中心であり、対策を十分にとっていたとしても限界がある。こうした接待を伴う店舗の従業員が、店舗以外で感染してしまう可能性も否定できない。

 店舗で対策をしてもなお感染者を出してしまった結果、東京都のトップから「(ステッカーを)ただ貼っておけばいいや、みたいな事業者」と痛罵されては、店側はまさに立つ瀬がないという心境であろう。

 もちろん小池知事が言うように、まともな対策をせずにステッカーだけを貼っている店は存在する。それはそもそも、都が対策をチェックしない仕組みになっているからだ。だからこそ、対策の中身を確認して実効性を担保する仕組みが不可欠なのである。