千代田区は保健所の審査で独自基準を制定
2カ月たっても実効性担保に動かない小池知事

 一方で千代田区は「千代田区新しい日常店」の名称で、感染防止対策に取り組んでいる店舗に区独自のステッカー発行の受け付けを8月11日から開始した。

 ステッカーは、必須の取り組みをしているクラスIと、さらに推奨される高度な取り組みをしているクラスIIの2段階があり、クラスIでも保健所による書類審査、クラスIIは保健所職員が訪問する実地調査が必須であるなど、きめ細やかに実効性を担保している。

 千代田区は、人口約6万6000人と小規模なわりに税収が潤沢であることから、他の区が容易にまねできる施策ではないであろう。とはいえ、繰り返すがステッカーのダウンロード開始は6月12日であり、すでに2カ月が経過している。実効性を担保する難しさは最初から分かっていたはずだ。だからこそ小池知事は、事務方の議論を踏まえてもっと早い段階で、店舗任せの感染症対策の限界を指摘し、23区や市町村、業界団体に協力を求めるべきではなかったか。

 ところが、小池知事が発信してきたステッカーに関する情報といえば、大相撲7月場所で掲示した「告知旗」であり、ステッカーがプリントされたTシャツであり、フワちゃんの動画であった。「ダウンロード100万枚が目標」「まずは都民の意識を変える」といった普及に向けた発言やパフォーマンスは見られたが、実効性を真剣に担保しようとする姿勢に欠ける。

 14日の記者会見で小池知事は「ステッカーを掲示している店でのクラスター発生は想定していなかったのか」と問われたが質問に答えず、フワちゃんの動画など自身のアピール策を列挙しただけだった。もし想定していたとすれば、取るべき対策を怠っていたことになるし、想定していなかったとすれば、それは都知事の資質が根本的に問われる事態だ。

 4~5月の外出自粛によって売り上げが“消失”し、今なお客の減少に苦しむ飲食店や小売店が多くある。彼らの生活や雇用が危機的な状況にあることは言うまでもないし、状況は日に日に悪化している。その痛みや不安を少しでも感じているならば、目先の反響を狙ったパフォーマンスよりも、店や利用客の安心を十分に担保する施策に地道に取り組むべきではないか。