フワちゃん動画で相変わらず“普及啓発”
警察官立ち入りでグレーな対策を強調

 ところが小池知事は14日の記者会見でも、人気ユーチューバーのフワちゃんを起用したステッカーの掲示を呼び掛ける動画をアピールするなど、相変わらずパフォーマンスには余念がなかった。その一方で、ステッカーの実効性を担保するまともな施策は説明されなかった。都の職員による抜き打ちの訪問にも触れたが、マンパワーを考えれば効果はかなり限られる。

 また小池知事がこの日の会見で繰り返し強調したのが、風営法に基づく警察官による店舗への立ち入り調査だった。

「昨日錦糸町において、警視庁の風営法による立ち入りの実施に合わせ、店舗の了解を得ながら、都の職員が、ガイドラインがちゃんと徹底されているのか、ステッカーを掲示している店舗に対して、感染防止策の実施状況の確認も行ったところでございます」――。小池知事はこう説明した。警察官に都の職員が同行した立ち入り調査は、14日時点で6回、計70店舗に行われたという。

 ただし警察が所管するのはあくまで風営法で、同法を基に感染症予防に関する調査はできない。都の職員が同行し、いくら店の“了解”を得ていたとしても、警察権の行使をちらつかせてプレッシャーをかけつつ予防対策を迫る手法は、法的にはグレーであるとの批判が警察関係者や専門家から上がっている。

 そもそもステッカーを掲示している店は、風営法の取り締まり対象外の通常の店舗の方が圧倒的に多いであろうし、コロナの感染源は「夜の街」だけではなくなっている。警察官の立ち入り調査を強調するだけでは極めて不十分であるどころか、むしろ問題が多い。

 一方でインターネットでは、入り口に堂々とステッカーを掲示している性風俗店の画像が掲載されていたりもする。小池知事が「東京都を虹色のステッカーで埋め尽くす」と語った末のこの結果を、一体どう考えればいいのだろうか。

 なおステッカーのダウンロードが可能になったのは6月12日だが、関係者によると、実は都の事務方の間では、どのようにステッカーの実効性を担保するか、その手法について検討が重ねられてきた。

 業種ごとの業界団体に協力を得る手法は、小池知事も14日の会見でようやく言及した。だが、「もし、業界団体が都の委託を受けて、ステッカー掲示店の感染対策を確認するとすれば、公平を期するため全ての店舗を対象にしなければならず、現実的には難しい」(関係者)。

 飲食店やクリーニング店など業種ごとに業界団体はあるものの、業種によっては加盟していない個人商店もあろうし、団体がカバーできない業種もある。また業界団体の関係者に、保健所の職員ほど感染症予防の知識があるわけでもない。