メディアには「女のカラダ」に関する都市伝説があふれています。
「あたためは生理痛にも妊活にも効く」「仕事をしすぎるとオス化する」「恋愛やセックスをしていないと女性ホルモンが枯渇する」……。これらはどれも、医学的には根拠のない情報。でも、それに振り回されて、不調のスパイラルに陥ったり、落ち込んだりする女性は少なくありません。
「女体」についての第一人者、産婦人科医の宋美玄先生が、いまの医学でわかっている「ほんとうのこと」だけをベースに20代~40代女性の、身体や性の悩みに答えた新刊「医者が教える女体大全」の中から、一部を抜粋して紹介いたします。

「女体」周りには<br />根拠のない「眉唾」情報が<br />あふれている!Photo: Adobe Stock

真面目な人ほど情報に振り回される

 私は2017年、東京駅の近くに「丸の内の森レディースクリニック」を開業しました。すべてのライフステージの女性がセルフケア感覚で通える「かかりつけ医」になりたい、そう思ってのことです。

 20~40代は女性にとってのさまざまなライフイベントが起きる、忙しくも充実した時期です。仕事や結婚、子どもの有無については多様な生き方がありますが、この時期の女性の身体は常に妊娠、出産に備えて機能しています。具体的には女性ホルモンが作用し、排卵し、生理を起こしています。それにともなって不調が出ることもあります。そうした悩みをもつ女性が、日々クリニックを受診しています。

 これまで勤めてきた病院などでも、たくさんの女性たちとお話してきましたが、いまのクリニックはオフィスビル内にあるため、受診している大半は働く女性。通勤の前後やお仕事の合間に通われている方が多いです。そのリアルな声に日々耳を傾けていると、次のようなお悩みが出てきます。

・つらい生理痛をなんとかしたい。
・毎月のPMSに振り回されたくない。
・遠くない将来に妊娠を考えている。

 ところが、さまざまな思いはあっても、正しい対処法にたどり着いていない現実があると実感します。知識がないという意味ではありません。自分の身体のことですから真面目な人ほど熱心に調べます。雑誌やネットにはたくさんの情報があり、次々と目新しいものも出てくるので、いくら調べてもキリがありません。正直、私もなかなか追いきれません。

 しかし、それらが正しい情報とはかぎりません。医学の基本的な知識がない人が取材もせずに書いているものもあります。医師が監修していても油断はできません。残念なことに、メディアからの期待に応えようとしたのか注目されたいのか、事実と違うことを発信する医療関係者もいます。

 読者のみなさんがそれを見極めるのはむずかしいと思います。けれど、信じて困るのは自分自身です。実践しても痛みや不調が治まらないどころか、その原因として病気がある場合、時間が経つほど進行してしまうかもしれません。妊娠しない本当の原因が、いつまで経ってもわからないかもしれません。

 婦人科の女性医師として、クリニックに来てくれた女性だけでなく、世の中の悩める女性を、ひとりでも多く救いたい。そこで女性の身体について、いまの医学でわかっている「ほんとうのこと」だけを書いた「医者が教える女体大全」を出版いたしました。