子どもと触れ合う環境 
それでも子どもを産む選択肢なし

 夫とは仲が良いと話すミキさんだが、夫婦の生活は山あり谷あり。9年の結婚生活のうち3年は、シンゴさんの仕事の関係で、海外で過ごしていたという。現地では、同じように移住してきている日本人の妻たちと集まることが多々あった。
 
「いわゆる駐妻(駐在員に帯同する妻)的な。そのときは私が一番年下で、みなさん自分の子どもと参加していました。最初のころは子どもがいなかったのは私だけでしたね」
 
 少子化の現代…積極的に求めないと子どもと触れ合う機会はなかなか持てないものだが、ミキさんは子どもの多い環境に日常的にいることが増えた。そこで「自分たちも子どもを持ちたい」という感情になる人もいるだろう。しかし、ミキさんは違った。
 
「確かに、周りのお母さんたちからは『子どもいいよ~』とか『予定はないの?』と聞かれましたが、私としてはのんびりと受け止めていました。『あ~、子どもねぇ、うーん…』とどこか人ごとのような…。確かに産もうと思えば産める環境ではあったんですけど、そうはならなかったですね」
 
 というのもミキさん自身、子どもがいる人生を想像できなかったのだ。
 
「子どもを見たらかわいいなと思いますし、そばにいたら一緒に遊びもします。でも、実際に自分の子どもが常に生活の中にいる、というのは考えられなかったですね。振り返ってみると、人生で一度も子どもが欲しいと明確に思ったことはなかったかも」
 
 シンゴさんも「赤ちゃんが好き」と言うが、どちらかというとその赤ちゃんが育っていくところまでは想像ができていないのでは、とミキさんは推察する。当たり前のことだが、生まれたての赤ん坊は親がびっくりするようなスピードで成長し、やがては自分と同じ「大人」になる。そこまで想像した上で「子どもが欲しい」と思う人も実際はなかなかいないのではないか。
 
 日本に帰ってきてから気持ちが変わったかというと、そういうわけでもなかった。帰国後に再就職、フリーランスを経て、36歳で起業。今は仕事が楽しい。
 
「会社を作ったことで、会社が子どもみたいなところはありますね。自分たちの子どもを作るとか、今は全然入る隙間がないです」